ヒロ

ファイト・クラブのヒロのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.5
有名なのにも関わらず、未視聴なので見てみました。
正直セットアップが相当つまらなくて、すんなり入れない構成ではあるけど、第1ターニングポイント辺りの、ブラピに飛行機で会う&家が爆発辺からまぁまぁ。
アメリカンサイコみたいな、物質主義・肩書き主義みたいな消費文明・資本主義社会の皮肉と問題提起的な内容。
『消費文明』『人はライフ・スタイルに仕える奴隷、物に支配されている』
若い頃の?ブラピがかっこいいです。単純に。そこも間違いなく視聴ポイントですかね。
不満を抱えつつも、安全牌に生きてくことは、本当の『生』と言えるのか?みたいな。全部手放して、ある意味自ら『無敵の人』になろう的な。『自ら』ってのが、選択権が自分にあって恵まれた立場だな、と思った。
お金や物質等の満ち足りちゃってた時代の映画ってのを感じた。確かにそういう時代があったのは事実なので。
でも二十一世紀に入って、人間は災害やら戦争やらパンデミックやらで身近な人や日常が失われる事を経験した時代になった。
物質的豊かさなんてもんは、まやかしだって、何でもない代わり映えのない日常だって簡単に壊れる。永遠じゃない。何の保証もない。もう人類分かってしまってる。
戦争や津波で廃墟と化した街。
街は人類の営みや文明の、長い歴史の目に見える姿でもある。
ここ数年の経験で、人は平和や平穏は本当は稀有で尊いもんだって、知識としてではなく、身を持って理解してしまってる。
だから現代社会のしがらみやシステム的な物を全部ぶっ壊す、社会の上下をひっくり返す事の価値っていうのが、今の世代には齟齬を生むかもしれん。何でもない平穏な日々って本当は尊い。ちょっとした日々の不満何て、実際の戦禍、被災に比べたらなんてこと無い。
本当の真のどん底。
真のどん底とは自発的に進んで行った所には無い。タイラーはどん底を経験しろというが、本人が望んでいない状況で訪れたどん底が、真のどん底だ。そこに個人の選択の余地は無いのだから。強制的に心の準備もなくどん底に落とされる。
現代社会に対する不満だ、退屈だ、イライラする、を全部放棄するための、エゴ的な破壊、暴力であると感じた。 
仕様がない。この映画自体、9.11が起きる前の映画だから。(9.11は2001年に起きてる)
これは二十世紀ラストの映画なんだなぁ、と。人類がまだ豊かで消費文明、物質主義に気が付かないうちにコントロールされてる時代の名残りを感じる映画でもあった。だからこそ、そこに対するアンチテーゼ的なメッセージなんだろう。『お前らそれでいいのか?』と
しかし何かを成し遂げて人生を終えたい、己がここにいた爪痕を深く刻みたい、男的な野心というかね。
そういうのはわからぬでもない。
会社で搾取され、周りに搾取され、負け犬と見下され、そんなクソみたいな人生でよいのか。お前の望んだ人生はそれなのか、と。
『殴ると本当の自分が分かる』『男は傷痕がなければ』『全てを失って真の自由を得る』『血にまみれることの爽快さ、男達の願望を僕とタイラーが実現した』『怒りやストレスを発散する場を与えた』『生きてることを実感する』
不眠症は起きてる間も意識がちゃんとしないという…まさに酔生夢死。
酔生夢死…『何もやり遂げずに価値のあることをせずに、一生を終えること』
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