薄暗い地下室…
そこにひしめく男たちの荒い息づかいと汗の臭い…
おれの前で拳を構えるこの男…誰だっけ?おれはこいつを憎んでさえいない…だけど…だけどこいつをぶちのめすんだ…
ねぇ…ゲームで殴り合うなんてバカみたい…
ひとつ間違えたら死ぬかもしれないのよ
そんなファイト…愛するものを守るときとかのために取っておいてよ
やつのパンチはギリギリで避けることが出来た…やつの身体から飛んだ汗が顔にかかる…横を通りすぎたやつの拳が空を切る音が聞こえた…
私の甘いキスより知らないやつの拳が欲しいわけ?
生きてる実感?
そんなの死ぬ時に気付くわよ
映画のアクションシーンで良く見るスローと早回しが交互に入るエフェクトが脳内で本当に起こる…周りで見ている男たちが叫んでいるのがスローで見える…やつの顔面に拳を叩き込む…
拳の痛みはアドレナリンのせいでもう感じない
ねえ、早くこっちに来てよ…
抱きしめてて欲しいだけ…
この世にもう私たち二人しかいないみたいに…
直後に意識を失ったやつは膝から崩れ落ちる…
喚声…突き上げられる拳
天井の蛍光灯の明かりが目を射す
ねえ、早く来てよ
おれは生きてるだろう?