うたまるさん

悪人のうたまるさんのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
3.5
心がギュー、となる作品ですね。

「怒り」、「流浪の月」と李相日監督作品を観て、改めて本作品が観たくなり、鑑賞してみました。

李監督の作品はいつも私の心をギューって鷲づかみにします。しかし、その感情にはまだぴったりな言葉がありません。
ただ、いつも感じるのは李監督作品で描かれる人物像には、我々が普段目にしている事実と、当事者が感じている事実との間には乖離があるということを気付かせてくれます。
普段、我々はついつい自分に当てはめて解釈してしまいがちなのだが、それは上べに過ぎない。

本作では、幼少期に母に置き去りにされたことから女性に対しての関わり方がわからない不器用な青年祐一が、真面目な販売員の光代と出会い、様々なことに気づいていく物語。
しかし、単純な純愛ではない。何故なら彼は光代と出会う前に出会い系サイトで出会った女性を殺してしまっていたのだった。

何故、祐一は女性を殺したのか?何故、光代は祐一に惹かれたのか?そして、祐一は光代を愛せたのか?
鑑賞後もしばらくは余韻に浸ったまま椅子から立ち上がれませんでした。
恐らく、それぞれの登場人物の心情を理解しようと思ったらその人数分だけ本作品を観なくちゃわからないのかな、なんて感じてしまいました。
確かにこれは日本アカデミー賞の各部門を総なめにしますよね。

深い作品ですので、まだご覧になっていない方のために細かい描写の話題は省きます。
是非、ご覧になってギューを体感してみてください。オススメです。
うたまるさん

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