ちゃそ

悪人のちゃそのネタバレレビュー・内容・結末

悪人(2010年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

善悪は全て紙一重であり、見る者、タイミング、環境によって変わりうる。どんな人も「善人」にも「悪人」にもなりうる。そして、一度どちらかと判断したらそれに囚われる。
日々の繰り返し。孤独。この生活を変えるために出会いを真剣に求めてきた2人が初めて手にした愛は、すでに終わりが見えていた。初めてかけがえのない、失いたくない、そして生き甲斐となる「大切な人」を手に入れることで人生に差す一筋の光。夕暮れを2人で眺めるラストは、2人が夢見てた幸せな日々がほんの一瞬現れたかのような穏やかな気分になるとともに、迫りつつある終わりも相まってなんとも言えない切なさに溢れていた。
本作品において祐一は「悪人」に敢えてなろうとする点で他の人物と一線を画している。母親と会うたびに金をせびる、という話では敢えて金をせびることで母親に息子の育児放棄をしたという罪の意識を持たせないようにするという優しさが見られる。また、2人の別れでは、自分への思いを断ち切れるように、少しでも彼女の罪を軽くできるように、「迷惑をかけないように」、わざと「悪人」になった優しさを見せる「善人」の姿があった。しかし、引きずられながらも最後に彼女に手を伸ばそうとしており、「悪人」になりきれていない部分も見られる。こうした祐一の行動からも、善人と悪人の境目がいかに朧げなものかというものがわかる。
各々の愛する人に対する想いの交錯がとても生々しく、そして物語に深みを与えていた。また、現実に蔓延る人間の空虚さと愚かさをありありと体現する登場人物の演技は圧巻であった。
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