人はどこかに「悪人」を抱えて生きている。
どこかの一面から見たとき、容易に悪人になってしまう。
そんな一端に気づかされる名画。
いっときの感情を昂ぶらせ人を殺してしまった祐一。
感情を逆なでするようなことを言い、殺された佳乃。
その佳乃を怒らせる原因を作ったイケメンの男。
その男を形作った・・・周りの人々?ひいてはコミュニティ?社会?
と数珠つなぎのように人の業が連なっており、その地域で殺人事件が起きるということは、地域が病んでいることを示しているのかもしれない。
柄本明演じる被害者の父親がこう語る。
「愛のないやつが増えた。その人が笑うだけで自分まで幸せな気持ちになるのが愛ってもんだ」と。
しかし、その愛のための行動ですら、誰かにとっては悪人になり得てしまう。
決して気持ちのいい映画でないが、ひとつの正解を決してうたわない良作。
ただ、ミステリー(真相がわからない)部分で、話を牽引していた中で、物語中盤でそれを明かしてしまい、少々推進力を失ってしまった印象。
それを差し引いても、画角・陰影に素晴らしいものがあり、さすが当世一流の作家コンビである。