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バンボーレのFilmomoのレビュー・感想・評価

バンボーレ(1965年製作の映画)
4.1
①イタリア映画お得意のオムニバスで、どのエピソードも皮肉に満ちている。「バンボーレ」は「バンボーラ」の複数形で「人形」の意味だが、この映画を観ればその意味が「まるで人形のように振り回され、踊らされている人々」といったニュアンスのように感じられるし、「人間」ではない、人の形をした「人形」という意味で登場人物たちを皮肉っているようにも思える。4話構成で、2話のルイジ・コメンチーニ×エルケ・ソマー、3話のフランコ・ロッシ×モニカ・ビッティのエピソードが面白く、イタリア映画の奥深さを垣間見ることができる。よく全話艶笑喜劇のように解説されているが、すべて喜劇ではなくバラエティ豊かな『男と女の奇妙でアイロニーたっぷりの小噺集』といった感じだ。②1話はヴィルナ・リージの電話の長話のせいで、夫のニーノ・マンフレディが浮気をする話で、4話の中で最もライト・タッチなスケッチ。ヴィルナ・リージのすらりと伸びた脚線美も楽しめるが、向かいのテラスの水着美女もなかなかグラマーだ。2話も引き続き艶笑譚でエルケ・ソマーが恋愛に興味が無く、優秀な遺伝子を求めて男を探すがなかなか見つからないという話。その男探しに付き合わされる冴えない運転手とのやり取りが良い。結末は観客の共感を勝ち取るだろう。③3話は松本清張ばりの皮肉な話で、モニカ・ヴィッティが年の離れた夫に嫌気が差し、様々な男に金を払っては夫を事故死に見せかけて殺させようとするがことごとく失敗。愛人にも持ちかけるがいざとなると意気地がない。これは本当に松本清張の短編を味わう印象がある。4話はジーナ・ロロブリジーダの独壇場で、神父の付添の甥に一目惚れしたブリジーダが、自慢のプロポーションを活かしてあの手この手で甥を誘惑するがうまくいかない話。この誘惑シーンで甥の隣の部屋に陣取ったブリジーダ(ホテルの女主人なので思いのまま)が、鍵穴から覗かれていると思って、部屋で着替えをする。プロポーション抜群のブリジーダのセクシーなしぐさや下着姿は今でも通用する美しさだ。それを見せる手法が鍵穴からという構図も面白い。本作のボロニーニの女性を捉えるショットは完璧で、ブリジーダの魅力を最大限に引き出している。どのエピソードもイタリア式ウィットに富み、男と女の関係の面白さについて描いているが、どの話にも皮肉めいたところがあり、共通するコンセプトだと思われる。
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