極楽蝶

赤線の灯は消えずの極楽蝶のレビュー・感想・評価

赤線の灯は消えず(1958年製作の映画)
3.5
1957年の売春防止法施行後の青楼で働いていた女性の実情を描いた作品として価値あるものだと思います。
この作品を観ると自然と売春防止法施行前夜の青楼での人間模様を描いた「赤線地帯」(1956年/溝口健二監督)が思い浮かびますねぇ。両方の作品には、おもちゃ工場、田舎から出てくる弟(息子)、夫が働けないので体を売る妻などが似ている設定があるけれども、当時はこれらが貧困を象徴する典型的なものだったんじゃないかなぁ。
この作品では、ヒモのようなヤッパのジョー(根上淳)が出てきたり、女を取り締まるより「漁る男を捕まえろよぉ」(正確ではないけれど)というセリフがあり、男性の行動を指弾しているように見えるけれども、監督は慎重に女性の女性に対する無理解が青楼で働いていた女性の更生を妨げていることも描いている。
そんな中で、ひとつの救いはヒデ(野末ひとみ)が実家で働いていた宗吉(船越英二)との結婚を暗示するシーン。主役の信子(京マチ子)は、更生のためにいくら一所懸命にやっても過去が分かると職を失ってしまい、ヒモの男に付きまとわれたりし、最後は元の仕事でしか生活ができないように追い詰められてしまう。まさに「赤線の灯は消えず」だねぇ!!
ところで、ヤッパのジョーは自分の子供が信子のお腹にいると分かると呆然とし、沖縄に売られていく女たちを逃がしてしまうけど、ジョーのことはどう理解すればよいのかなぁ!?
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