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自由の代償のysmのレビュー・感想・評価

自由の代償(1975年製作の映画)
5.0
誰かしらの家にお邪魔した途端、不意に森に投げ込まれたような気がする時がある。そこには家の持ち主である誰某だけが読み取れる徴候知の集合的付置とでもいうべき徴(しるし)のネットワークがあるからだ。それは山中で狩人が足跡や天気から獲物の在処や気象の変化を辿ることを思わせる。訪問者はその徴を家の持ち主と同じようには読み取ることは決して出来ない。ファスビンダーのメロドラマは、この徴を読み取る技術の有無で恋愛を階級闘争の場に変える。その徴と関係しているのは一体誰なのかという感性的=政治的な問い。ある主体をその人として分有させる徴のリーダビリティ。宝くじで一山当てた男が手に入れた金銭の等価性では決して無効化できなかった根源的な負債。
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