よしまる

獄門島のよしまるのレビュー・感想・評価

獄門島(1977年製作の映画)
3.6
 マンスリーカネダァァー、ではなくて、マンスリー金田一。larabeさんとの企画、詳しくは「 #マンスリー金田一 」をどうぞ。

 さて6月です。フィル活を始めて3年目ですが1週間で1本も映画を観なかったのは初めてってくらい多忙になっちゃいまして、まずはこの3作目「獄門島」から再開です。

 一般的にはシリーズを重ねるごとに「お約束」というものが出来てきてそれを愉しむのが正しい見方、ということになるわけで。

 俳句や童歌になぞらえた「見立て殺人」によるアート性。
 地方の名家に渦巻く怨念、閉鎖的ムラ社会と歪な血縁関係、そして戦争の爪痕。
 人が死んでから謎を解く役立たずの金田一と間違いだらけの警部。

 こうした決まりごとを存分に享受してこそ面白く見れる。

 普通で考えたら、俳句の字が「達筆すぎて読めないな〜」って言ってる間に次々に殺人が起こるなんて、何のための探偵?て思ってしかるべしだし、「よし、わかった!」といちいち見当はずれな断言をする警部に至っては、お前が言った人は容疑者から外して良しってわかりやすいにも程があると突っ込まざるを得ない。

 つまるところ、それこそが面白い理由でもある。

 原作を読んでいないので、横溝の本来の面白さを理解していないのかもしれないのだけれど、とにかく本作は原作ファンにも圧倒的に人気が高いにもかかわらず映画化に当たり犯人を変更するという荒技に出ているらしく、ならばこそそのことでより先に挙げたような映画的楽しみに満ちていると言えるのではないかと想像する。

 人に言えない過去をひた隠しにしながら生きる女の情念を据えることで、ミステリーよりも人間ドラマとしてより映画的に面白くしたのだろうか。
 女中さんにしては美しすぎてどう考えてもキーマンぽい司葉子、直接的な犯人とは思えないながら何か裏のありそうな美少女に大原麗子と、ビジュアル面でも華のある画作りを欠かさない市川崑らしさが堪能できる。

 正直、初めて観た数十年前にはもっと面白かった気がするのだけれど、ミステリーとしてのストーリーテリングの弱さゆえのことなのかもしれない。
 それでもなお市川×石坂コンビには、抗えない面白さがたっぷりと詰まっている。