空きっ腹に酒

パリ、18区、夜。の空きっ腹に酒のレビュー・感想・評価

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)
-
気怠いムードをまとう彼らの泳ぐ街、パリ、18区。ここへと流れ着いた者と、去ろうとする者と、とどまる者と。日々を生きることにいっぱいで、明るい未来を描けないのだとしたら、ひとは手段を選ばなくなるものなのかもしれない。失うものがないことで、時にひとは大胆にリミッターを外すのかもしれない。今ある生活を捨て去って、ここではない別の場所でなら、もっと好きなように楽に生きていけるのかもしれない。


ひんやりとした空気が貼り付いた画面、老婦人ばかりが狙われる物騒な事件の続く、ちっとも憧れないパリ、なのにすごく惹かれた。寒空の下 屋上で過ごす夜、クラブで踊る夜、ストリップショーで肌を見せる夜、ひとり街を歩く夜、、わたしは夜が大好きで、その夜のシーンがどれも美しかったから。どの夜にも物語がある、それを映像で語る、本当にいいな。
主演の女性(名前忘れた)、ほんとうに綺麗。不健康そうで、気怠そうで、この映画にぴったりだと思った。ホテルの部屋の掃除しながら他人の生活の一部にそっと触れるシーンが好きだった。彼女の所作と横顔とを見て、やっぱり“美しい”は映画になる。って改めて思った。

あと最後まで分からなかった、オープニングのヘリコプターの操縦士の笑い。あのシーンが意図したものは一体…。初っ端からあの高笑い、不気味さすら感じたのよね。
ラストにこの映画の中で唯一の希望を感じる。どんな手段であれ、チャンスを手に入れたなら前に進むんだ。


(ずっと観たかった映画をスクリーンで観れて嬉しい。)
空きっ腹に酒

空きっ腹に酒