結局カレー

誰も知らないの結局カレーのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
3.9
1988年に起きた巣鴨子供置き去り事件を題材にした作品。児童虐待を描く作品をみたのはこの映画が初めてで当時はネグレクトなんて言葉知らなかった。

「お母さんね、今好きな人がいるの。」「私は幸せになっちゃいけないの?」自分達が母親を求めることがまるで母親の幸せを奪ってるかのように思えてしまう辛さ。帰ってこないのは自分達に理由があるんじゃないかと考えてしまう不安。子どもたちの言葉や表情が自然で、その言い表せられない悲しみがひしひしと伝わる。「はい、山本です。」の破壊力よ。こんなに不安で押しつぶされそうな毎日を送って母の帰りを今か今かと待ちわびてるのに、電話口で知らない苗字を名乗る母親の声を聞いたもんなら。私なら何してるのって言いたくなるけど、言葉が出なかったのは絶望だったのか、母の幸せを尊重したかったからなのか。

母親の無責任な育児放棄は何よりも罪深いけど、母親と子供たちを捨てた男たちだって同罪だ。明が会いに来たときもこの状況をおかしいと思えたはずで父親たちも無責任。コンビニ店員や大家さん、野球の先生も何か気づくチャンスはあったはずなのに誰もが知らないフリをする。無戸籍の認知されてない子どもたちが大人に目を逸らされてしまったら、それこそ本当に誰も知らない、いなくなってもわからない子たちになってしまうのに。「親戚の子が遊びに来てるんです」ってすんなり嘘をつけるようになって、家からでちゃダメって約束をしっかり守って、自ら誰にも知られないように生きてる兄弟に胸が張り裂けそうになった。兄弟4人揃って外へ遊びに行くシーンは、心から楽しそうで、子供らしくて、笑ってる姿が愛おしくて泣いた。これが演技ってドユコト、、、

周りの知らない大人たちにもどかしさを感じる一方で、自分だったら何かしただろうかと自問自答する。4人のつながりを奪う敵になってでも4人の命を守ろうとしたか。空想でもきっと守ったと断言できない自分に悲しくなるけど簡単じゃないことはわかってる。ただ、知らないフリしない大人を生きていきたいと思った。