是枝監督の「怪物」がすごく良かったので、子供の頃にみて退屈だと思った本作を改めて観賞。
今になってみると重たすぎて...
「子育て放棄」のニュースはよくみるし、「悲惨やなあ」とは思うけど、現場をこうして見せられると何も分かってないまま正義面してたなと思わされる。
映画の元ネタは1988年に起きた巣鴨子供置き去り事件。事件では長男とその友人からの暴行で三女が亡くなった他、生まれて間もなく亡くなった次男の白骨遺体が押し入れから見つかった点が今作との違いだが、映画で監督が伝えようとしていた「誰も知らない。知っているけど面倒に巻き込まれないために知らないフリをしているのではないか」というテーマに振り切るためには、長男には全く罪のない設定にしておいた方が分かりやすい。
ちなみに実際の事件では2人が亡くなっているのにも関わらず、母親は懲役3年、執行猶予4年というあまりに緩い判決となっている。こんな酷い仕打ちにあったにも関わらず、その後長男と長女は母親と暮らすことを選択しているのだから驚き。母はどんな親でも母なのか。
コンビニの店員や、近所の大学生、大家さんがもっと早くに行政に連絡すれば子供を死なせることはなかったのにと悔やまれるが、自分の家の近所にこういう子供達がいたら通報できる自信はないので彼らを攻めることもできない。
それにしてもこの母親はYOUじゃなきゃ出来なかったと思う。これから子供を捨てるのに、何の罪悪感も顔に出さずに子供との時間を楽しんでいて、普通は俳優のエゴで罪悪感を演技に盛り込みたくなるだろうに...欲のない演技が逆にリアルとサイコパスを際立たせている。
柳楽優弥くんも終始無表情なのがリアル。本当に大変な目に遭ってる時、人は悲しい顔とか辛い顔をしない。無表情であることが多いと言われる。カンヌで主演俳優賞とれたのは、この無表情が故だろう。