シートン

誰も知らないのシートンのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.1
子どもたちの残酷さ、大人たちの無関心

しかし、虐げられ無視されてきたきょうだいたちのなかにもその残酷さと無関心の萌しがある。その邪悪さを、邪悪な世界に苦しめられている彼らのなかにも描きだしているところに現実の冷厳さが表れている。そして、製作者の胆力が。

紗希が彼らに寄り添い、彼らとともに生きているところを描いて、映画は終わる。
彼女を母として、子どもだけの4人家族が新たに生まれたのか。

しかし、紗希の服は綺麗だ。彼女もまた時折り帰ってくる母として、3人の前に現れる。それがこの家族のあり方なのだ。物語は踏襲されつつ、新しい偏差を生む。彼らは彼らとして生きていく。

紗希が加わって自足したかに見える家族は、大人たちの無関心とその装いによって、続いていくようだ。そのきわめて小さな幸福と、深甚なる孤独と欠如について、この映画はそれ以上のことは何も語らない。この家族は発見されることなく、いまもわれわれの近くに住んでいるのである
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