かぷちいの

誰も知らないのかぷちいののレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.9
2020 7/3 1度目の鑑賞

「巣鴨子ども置き去り事件」を題材とした是枝監督の作品。長く長く、重い141分が流れていきました。さすがは是枝監督。子役の演技や撮り方がめちゃくちゃうまい。よりリアルティーさが増して、貧困さや子どものリアルな感情を感じることができた。ほんとに胸が締め付けられる。序盤の方で、新しいアパートに引っ越して来た時、家族で決まりごとを確認するシーンでゆき(清水萌々子)の発言。「分かった」「できる」ではなく、「分かる」と。この言葉は自分の中ですごい気になりました。やはり環境から子どもながら状況の異質性?を理解しての発言というか(うまい言葉が見つからない…) そういうことを感じました。そしてこれも是枝監督ならではだなと思いますが、明確な悪者を作らないっていう作品作りがされているのかな?と思いました(違うかも知れないですが) 映画を観ている人は明確な悪者がいればその登場人物に対して、怒りや哀れみ、悲しみといった感情の矛先をあてることができる。もちろん内容の理解もしやすくなります。しかしあえて明確な悪者がないことで、観ている私達に自分をその場に置いて考えるという形に落とし込め、より感情移入しやすくなる。鑑賞された方の中には自分と同じように「もしも自分が当事者なら?」など考えた方も多いのでは。メッセージ性やリアルな心情、映像から伝わる貧困さなど、とても多くのものを「記憶に」「心に」残してくれる作品だと思います。ぜひみなさんにも一度は観てもらい作品でした。


余談です。
映画鑑賞後、もとになった事件の詳細を調べてみました。現実はもっと壮絶で複雑だったのだなと思いました。自分からは想像もつかないことが実際に起きている。経験することはできないが映画から少しでも理解を示すことはできる。この作品を観て再確認させられました。同じような系統で「子宮に沈める」という映画があります。こちらもかなり重いですが、観るべき作品だと思います。気になる方はこちらも覚悟して鑑賞してみてください。長々と失礼しました。
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