MasaichiYaguchi

吉祥寺の朝日奈くんのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

吉祥寺の朝日奈くん(2011年製作の映画)
3.4
吉祥寺には住んでいませんが、映画に登場した井の頭公園、井の頭文化園、サンロード商店街、ダイヤ街、ハーモニカ横丁等、自宅から自転車で40分以内で行けます。
映画の冒頭から、ああここであそこで、桐山漣さん、星野真理さん、要潤さんがロケをしたんだと地元感情全開で観てしまいました。
吉祥寺は私が生まれた東京下町の庶民性と、多くの漫画家、アーティスト、ミュージシャンが住むというサブカルチャーの最先端が同居する街で、どの様な年代でも、どの様な趣味の人でも受け入れてしまう懐の深さと多面的な魅力を持っています。
だから吉祥寺は、本作品だけでなく、過去に何度も映画やテレビドラマの舞台として登場している。
映画は、役者の夢破れてアルバイト生活をしている朝日奈くんと、一児の母で喫茶店で働いている山田真野さんとの淡くて切ない恋愛模様を描いていく。
朝日奈くんを演じた桐山漣さんが、吉祥寺の街頭で見掛ける様な「今時」の若者を自然体で演じていて良い。
そしてヒロイン・山田真野を演じた星野真理さんがとてもキュートで、結婚していようが、子持ちだろうが、朝日奈くんでなくとも好きになってしまうと思う。
この二人の恋愛劇には「裏」がある。
映画の終盤で「裏」の種明かしがされるが、劇中、朝日奈くんの一寸した行動に注意していれば、これらが伏線であったことが分かります。
小品で地味な印象の作品ではあるが、青春の遣る瀬無い一コマをほろ苦く、そして温かく描いていて共感します。
特にラストの、役者の道を再び歩み出そうとする朝日奈くんの姿や、真野さんからの手紙の温もりが伝わって来て、エンディングロールで流れる斉藤和義さんの「空に星が綺麗~悲しい吉祥寺~」と共に爽やかな余韻を残してくれます。