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気狂いピエロのyawaraのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
4.2
つまらない生活に嫌気が差した男が、昔の女に出会い、なし崩し的にあてのない逃避行へとその身を任せていく。

持ち味は絵画にも似たアーティスティックな画面作りと、作品を通しての浮遊感。
男が感じている自らの生活への不満は、逃避行の中で表層化していく。現実と乖離していき、顧みることすら忘れてまるで宙を浮くかのように彷徨う。カット割りや流れの組み方も巧妙で、ショッキングであるはずのシーンもどこか夢見心地だ。冒涜的だが、実にロマンチック。鑑賞中はほとんどこの白昼夢のような感覚である。

日頃から募った芸術への思いは詩として溢れ出し、とどまることを知らない。物語の進行と平行して行われるノートへの出力に現れるのは、成し遂げたい事への焦りだろうか。これは彼を逃避行へと誘った出会いともうまく符合している。やはり構成が見事であろう。
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