ダンクシー

気狂いピエロのダンクシーのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
4.0
「俺には見るための"目"がある。聞くための"耳"、話すための"口"も。全部バラバラに動くような感覚にとらわれる。動かしてるのは自分なのに」

タイトルが中々ひどい笑
とにかく映像センスがずば抜けている。車を爆破させたり海に車を捨てたり、過程が面白いのは勿論、透き通った自然のバック、水責め拷問、川沿いにあるレコード、顔を青く塗る、首にダイナマイト、など印象的かつ画力の強い芸術的に感じるシーンが多い。特にラストなんかは凄すぎてずっと余韻に浸ってました。。
画面が赤くなったり黄色くなったり青くなったりと、基本赤青黄で構成されている作品であり、フェルディナンが書くメモや絵画のショットなどが随時挟まれる。こういうゴダールらしい演出の極地が、"さらば、愛の言葉よ"というワケです。

「何世紀もが嵐のように過ぎ去った」
「俺は彼女を抱き寄せ泣いた」
「それは最初で唯一の夢だった」

とてもシュールな演出とスカした哲学ぶった鼻につく応酬で構成されている。しかし、とにかくシュールな映像がスタイリッシュでカッコイイのだ。ここで思い出したのが、北野武だ。北野武は完全にゴダールに影響を受けている。HANA-BI、ソナチネあたりなんかは完全に気狂いピエロだ。

お金持ちの女と結婚して娘が生まれて、でも日々退屈なフェルディナン。とあるパーティを抜けて自宅へ戻ったところ、ベビーシッターがかつての女マリアンヌだった。そして彼女と一夜を共にして朝を迎えると、男の死体があった。そして彼らの逃亡劇が始まる…といったもので、"勝手にしやがれ"とほぼほぼ同じ。
このように、ストーリーの筋はしっかりあるのですが、それが内容と反して刹那的に淡々と描かれている。

「人間は夢で出来てる。夢は人間で出来てる。人生は美しい。夢 言葉 そして死。どの世界でも。愛する人よ 人生は美しいものだ」

女のせいでどんどん事件に巻き込まれていくノワール映画。しかし画面や色合いはカラフルで華やか。やり取りの全ては詩的で、哲学的。と言ってもそれほど深い話はしていない。2人の感性からくる、表面的に着飾っただけの会話。だからカッコつけてんすよ、識者ぶって。会話は出来てるけど訳分からんから、「何言ってんだコイツら!?」って退屈になる人も多いのだろう。しかしそんな2人の最後はあまりにも情けなくて滑稽でダサいのだが、なんかイイんだよなぁ。美を感じた。
というのも、望まない死であれど男と女が永遠に結ばれるのが"死"であるからだ。ラストのセリフ通り、死の美徳とはこういうことだろう。
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