てくのすけ

許されざる者のてくのすけのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
4.0
すっかり一般人のマニー、同じく年配で性欲だけは強いネッド、どう見てもいきがってるだけの若造キッドと不安しかない賞金稼ぎの一行と、一方は恐怖の暴力保安官という対峙の構図が示されるも、これが必ずしもカタルシスに結びつかないのが異質。

過去は全く描かれないのもあって、昔は恐ろしいガンマンだったという雰囲気がマニーにはまるでない。幼い娘にパパは人殺しなの?と問われ、キッドには殺しを武勇伝のように扱われ、ダゲットに人殺しと罵られる、そこにあるのは逃れられない過去のみ。さらに本意ではない殺しの依頼。「亡き妻に救われた」と語るマニーが、食うためにまたその手を血に染めようとするのがいたたまれない。

人を殺すことには覚悟が必要だ。逆に殺されるかもしれないという覚悟。そして許されない過去を背負うことになる覚悟。女の顔を傷付けたというのは状況を知った時点で理由にはなり得なくなるのに、相棒を失ったことがスイッチとなり昔に戻ってしまう。後にはやるせなさだけが残るのを知りつつ、それでも引き金を引く。それは自分の魂は救われないという覚悟。そして男は許されざる者となる。
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