ナツミオ

許されざる者のナツミオのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
4.4
NHK-BSPプレミアムシネマ録画鑑賞
【リアルな西部劇は格好悪い⁈】

『クライマッチョ』鑑賞後、イーストウッドの傑作西部劇が観たくなり、未レビュー再鑑賞。過去数回鑑賞、多分10年以上振り。再見してスコアアップします。

クリント・イーストウッド製作・監督・主演、アカデミー作品賞をはじめ4部門を受賞。映画作家として世界的な評価を決定づけた、映画史上に燦然と輝く傑作ウェスタン。

受賞歴
・第65回アカデミー賞9部門ノミネート
(脚本・主演男優・撮影・美術・音楽賞)
4部門受賞(作品・監督・助演男優賞・編集賞)
・第50回ゴールデングローブ賞
4部門ノミネート(ドラマ部門作品・脚本賞)
2部門受賞(監督・助演男優賞)
・第46回 英国アカデミー賞6部門ノミネート(作品・監督・脚本・撮影・音楽賞)
1部門受賞(助演男優賞)
・第27回 全米映画批評家協会賞受賞
(作品・監督・助演男優・脚本賞)
・第57回 ニューヨーク映画批評家協会賞 助演男優賞受賞
その他、多数の映画賞受賞

原題 『Unforgiven』

1992年米作品
監督 クリント・イーストウッド
脚本 デビッド・ウェッブ・ピープルズ
音楽 レニー・ニーハウス
撮影 ジャック・N・グリーン
出演 クリント・イーストウッド ジーン・ハックマン モーガン・フリーマン リチャード・ハリス ジェームズ・ウールヴェット フランシス・フィッシャー アンナ・トムソン 

日本語字幕 松浦美奈

(NHK番組内容より)
1880年、ワイオミング。列車強盗や殺人で悪名を轟かせていたウィリアム・マニー(イーストウッド)は、今では銃を捨て2人の子供と農場を営みながら密かに暮らしていた。しかし家畜や作物は順調に育たすず、3年前に妻にも先立たれ苦しい生活だった。
生活苦からやむなく再び銃を手にし、かつての仲間・ネッド・ローガン(フリーマン)、スコフィールド・キッド
(ウールヴェット)と共に、賞金稼ぎに出発するが、町には鬼保安官と恐れられるビル・ダゲット(ハックマン)が待ち受けていた……。

名優たちの存在感、深い余韻を残す物語、暗く美しい映像で、アカデミー作品賞をはじめ4部門を受賞。大スター、クリント・イーストウッドの映画作家としての世界的な評価を決定づけた傑作ウェスタン。

銃を捨て密かに暮らしていた老ガンマンが、賞金稼ぎのために再び銃を取る姿を描く西部劇。

前回の観た記憶は、全般に暗い画面だったが、今回観てかなりイメージが違っていた。

黒澤明の『羅生門』、『七人の侍』で描かれた真の戦いは泥臭く格好悪いもの。
そして、イーストウッド監督も、これまでの西部劇で描かれてきた描かれ方を覆しリアルに泥臭いもの、格好悪いものとして描いたことが素晴らしい‼️



以下ネタバレあり注意



【泥臭さを感じるシーン】
・マニーの妻が数年前に亡くなったのは天然痘。当時はワクチンも無い時代。

・マニーの家の中は、昼間でも薄暗く、夜はランタンが有っても薄暗い。町の酒場も同様。

・10数年ぶりに銃を手にした主人公マニーが練習するが、全く当たらない。
同様に、馬に振り回されて乗れない。

・肝心な場面で銃の不発。

・賞金首の1人を見つけネッドがライフル銃で狙うが撃てず、マニーが代わりに撃つが中々当たらず、やっと仕留めるが、直ぐには死なず水を欲しいと泣き叫ぶ。
そして、ネッドは自信を失い離脱する…

・トイレに入っている2人目を狙ってスコフィールド・キッドが襲う。相手はパンツを脱いで無防備、震えて直ぐに撃てないキッドがやっと仕留める。

・その後のカウボーイとの銃撃もお互い相手にかすりもしない。キッドは実は目が悪く50m先も見えない。
マニーがキッドに手に入れた賞金でメガネを買えとしきりに勧めるのもこのためだ。

そして、『七人の侍』では侍を雇うのは農民だが、本作で賞金を出すのは、町の娼婦たちというのも捻りがある。
そして、その被害者の怪我の状態が伝聞で話が大きくなっているのもそうだ。

脇役ではダントツで鬼保安官リトル・ビル・ダゲットを演じたジーン・ハックマンが高圧的なヴィランを熱演し、アカデミー賞助演男優賞受賞。

イーストウッドはハックマンに要求した役のモデルは、ロサンゼルス市警の元本部長であるダリル・ゲイツである。(Wikipediaより)というのも興味深い。
LA暴動の要因となったマイノリティへの弾圧を指揮。

マニーの旧友ネッド・ローガン役モーガン・フリーマンも息のあった相棒役は良かったが、死んでからの演技も大変⁈
実際はこの様に死んだ犯罪者を晒していたのだろうと思うと胸糞。

娼婦役ストロベリー・アリス役フランシス・フィッシャーは、リーダー的強気な性格。最初、元愛人のソンドラ・ロックに似てる⁇と思ったらフィッシャーでした…

クライマックス
マニーがネッドの仇討ちに酒場へ乗り込むシーンは、泥臭くも格好イイ‼️
一発では相手を倒せない。

音楽は、インストウッド監督作品の常連、レニー・ニーハウス。アカデミー賞音楽賞ノミネート。
ノンクレジットだがメインテーマはイーストウッド自身が担当。

エンドロールのラスト
イーストウッドが、師と仰ぐセルジオ・レオーネとドン・シーゲルに捧げた「最後の西部劇」。
西部劇の全てにオマージュを捧げた作品だと思う傑作でした‼️



AFI(アメリカ・フィルム・インスティチュート)選出の「アメリカ映画ベスト100」(1998)の98位に選出。

2004年アメリカ国立フィルム登録簿に登録


過去スコア3.9 →今回4.4へ
過去イイネ 9件
ありがとうございます‼️

【忘備録】ネタバレあり注意
(登場人物・キャスト)Wikipediaより

・ウィリアム・"ビル"・マニーBill Munny
演 - クリント・イーストウッド
アウトロー。極めつけの悪党とまで言われていた。妻は天然痘で死んだ。2人の幼い子供を抱える。

・ストロベリー・アリス 
Strawberry Alice
演 - フランシス・フィッシャー
情婦。強気な性格。
ソンドラ・ロックに似ている⁇

・リトル・ビル・ダゲット
Little Bill Daggett
演 - ジーン・ハックマン
保安官。高圧的な態度で町を支配する。
建築中の家はどうなる⁇
演技モデルは元LAPD本部長⁈

・ネッド・ローガン Ned Logan
演 - モーガン・フリーマン
農夫。マニーの友人。先住民のサリーという妻がいる。射撃の腕はもちろん、観察力もよくキッドが近眼なのがわかった。拷問を受けて殺害され、死体はさらし者にされる。
死体の演技も名演。

・イングリッシュ・ボブ English Bob
演 - リチャード・ハリス
ガンファイター。見せしめにリトル・ビルにリンチされる。その後、町から追放される。
名優が早々に退場し残念…

・スコフィールド・キッド
The Schofield Kid
演 - ジェームズ・ウールヴェット
マニーの元を訪れた若い男。殺し屋だが歴は浅く5人しか殺していないというが実はハッタリで本当は今まで誰も殺したことがない。いうほどの悪党ではないが猜疑心が強くマニーと一緒にいたネッドの素性を知らなかったことから威嚇射撃をした。実は近眼で視力が悪く、50m先が見えるかどうかのほど。しかし、マイクを射殺したことで、とうとう人殺しとなり、このプレッシャーに耐え切れず、殺し屋を引退することを決意する。
いい決心でした。

・W・W・ブーシャンプ 
WW Beauchamp
演 - ソウル・ルビネック
作家。ボブの付き添いで街に来た。
ボブ追放後は保安官に取材する。

・クイック・マイク
演 - デヴィッド・マッチ
カウボーイ。キッドに射殺される。

・デライラ Delilah Fitzgerald
演 - アンナ・トムソン
娼婦。暴行を受けて体を傷だらけにされた。瀕死のマニーを献身的に看病する。

・デービー・バンティング(デービー・ボーイ)
演 - ロブ・キャンベル
カウボーイ。マニーたちと戦い腹を撃たれて死亡する。

・スキニー・デュボイス
演 - アンソニー・ジェームズ
酒場の主人。
娼婦たちを都会から連れてきた商売人。

・ウィリアム・"ウィル"・マニー・Jr
Will_Munny
演 - シェーン・メイヤー
マニーの息子。少し口が悪いが父マニーの言いつけは素直に従う。
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