オレンジマン

許されざる者のオレンジマンのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
4.0

映画評論家の蓮實重彦は著作『映画狂人日記」の中で次のように書いている。長いけれど引用したい。
「『許されざる者』は断固として許さない映画である。何を、どんな理由で許さないのかなどと問うのはやめにしよう。問うことすら許そうとしないその潔癖さにおいて、この映画は唯一無二の美しさにおさまっているからである。(中略)およそ可能なかぎりのありとあらゆる反応を禁じられ、観客はただ途方にくれることしかできない。そればかりか、クリント・イーストウッド自身が、そんな映画を撮ってしまった自分をたやすくは許そうとしない気配が、痛々しいまでにこちらに伝わってくる。彼の新作は、許すことには徹底的に背を向けた苛酷極まりない映画なのだ。」

僕は最初にこの評を読んだ時、何を言っているのかさっぱりわからなかった。もはやギャグを言っているのではないかとさえ思ったが、しかし映画館でこの映画をかなりの集中をもって観ると、この評がなんとなくしっくりと来てしまった。なぜしっくり来たのかを考えるのはやめにしよう、考えることすら許さないのだから。

この映画で1番好きなのは、キッドがイーストウッドに向けて「俺はあんたみたいにはなれねぇ」というところ。殺人鬼イーストウッドは結局人間になることすらも許されていなかったのではないだろうか。きっと彼は地獄へ行くことすら許されないだろう。
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