リタ

許されざる者のリタのネタバレレビュー・内容・結末

許されざる者(1992年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

馬になかなか乗れないイーストウッドは
私には笑えるシーンだったけど

彼が現役で西部劇のヒーローやってた頃を
知っている人たちにとっては
哀しくなっちゃうシーンだったのかもしれないなー

そんな主人公の格好悪さも含めて
全部がアンチ西部劇な映画だった。


何故なら保安官がそこまで悪い奴に思えない。
殺されなきゃならない程か?

そして私には主人公の方がよっぽど悪党に思えた

「お前こそが本物の悪党だ」

どういう意味だろう?
なんのことを言っていたのかな?


保安官は、娼婦を見下して人扱いをしないし
アメリカを馬鹿にするイギリス人を不当に虐待した
それから人殺しをいたぶって死なせ見せしめにした

保安官が「本物の悪党」であるのは
主人公のように罪に向き合う姿勢が無いからか?
と最初は思ったのだけど

保安官が主人公に「地獄で待つ」と言ったように
彼も罪を自覚していた(した?)ようだから違う

荒くれた西部開拓時代、
街の安寧を保つ為に罪を犯したことが
死の報いを受ける程のことだったかな?


それより主人公の悪行っぷりよ

強盗のために男も女も子供も皆殺しにした過去があり
又聞きの一方的な、誇張された噂を鵜呑みにして
再びお金の為に人殺しに手を染める

家族が出来て罪と向き合い
悔いている様子ではある

けど「死にたくない!」っていうのは
単に地獄に行くのを怖がってるだけでは?


列車強盗殺人事件の大悪党は再び罪に手を染め、
金のために2人殺し更に保安官達を殺し、
無事に帰って子供達と幸せに暮らしました。


これが現実?因果応報なんてないんだ!

つまりこの映画に神様なんかいない
正義もない

主人公が言うように
「運が良かった」ってだけのことなのかも。



斬りつけ男は死んでいい気味なんだけど
牧童の若い方まで殺したのは娼婦達やり過ぎだし

普通に仕事してただけの保安官助手達の
殆どが死んだのは気の毒に思う

傍観するだけの街の人にだって咎はある


いい奴と悪い奴の境界が曖昧。


西部劇っていい奴が悪い奴を殺すけど、
実際のところは殺したら善、殺されたら悪
互いに誇張されて伝わっていく

っていうことかな?
歌舞伎みたい



赦されざるのは、きっと正義の捏造だわ

この映画でいえば、きっとこのあと
一方を美化し、一方を貶めて書いて広めるような
眼鏡の物書きみたいな人の行為。


イーストウッドの映画っていつも
見応えあって夢中にさせられて
最後に消えない傷を付けられる気がします。

イーストウッドの西部劇が好きだった人達は
余計傷ついたでしょうね。
リタ

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