くりふ

怪猫有馬御殿のくりふのレビュー・感想・評価

怪猫有馬御殿(1953年製作の映画)
3.5
【昭和のネコミミに萌える夏】

夕暮れどき、火の見櫓の半鐘が、誰もいないのに天高く鳴り響く。その軒下に、指の一本欠けた何かがぶら下がり、にやりと揺れている…。

そんな素朴な張り手で始まる1953年作の怪談。化け猫映画の入門篇として良!という紹介を数箇所で読んだので、みてみましたが、素朴に「楽しかった」です。

二本立て公開のB面だったようで、49分の尺ですが逆に無駄なく、濃密でした。

スタントも素朴で代役まるわかりだし、特撮レベルもトホホなのですが、そこはこの時代、少ない予算だろうしご愛嬌…で済ませられる部分でした。

何より面白い怪談を作るぞ、という志が頼もしく感じられ、入りこめるのです。今でも映画館の暗闇でみたら、けっこう怖がれるんじゃないかと思いました。

化け猫映画は過去に何度か、ブームがあったようですね。

これは入江たか子さんが復帰後、「化け猫女優」として活躍を始めての二作目。一作目よりこちらの方が遠回りせず、直球でずっと面白かったです。

基となったのは、人形浄瑠璃から歌舞伎の演目となった「鏡山旧錦絵」で、女忠臣蔵とも言われる虐めと敵討ち、日本人のDNA揺さぶり系の物語(笑)。

本作では、殿の寵愛を受ける新入りを気に食わない側室が、彼女をいぢめ倒す。これが強烈。女の園で渦巻く嫉妬心がまあコワイ。…丑の刻参りまでするんか!

しかし当時の美人集まっての陰湿キャットファイトはまあ楽しく、飽きません。化けキャットファイトになってからは、たか猫さんの独壇場ですが、美しく、しかし熟女の凄みも滲む怨念演技に説得力があり、人気が出たのもわかる気が。興奮するとネコミミ起きて、ぴくぴく始まっちゃうのはカワイイけど(笑)。

眠る女たちを自在に操る「猫じゃらし」の見せ場が楽しい!裾捲れるぞエロス!

そしてく…首がぁ!追い詰められても決して忘れぬ主の恨み…窮猫○を噛む!キャットファイトからドッグファイト(笑)へ昇華する、見事な疾走/浮遊感!

「どうやら黄泉路の支度も整ったようじゃ」

絶妙に使われる、このおそろしくもカッチョイイ決め台詞に、惚れました(笑)。夏の夕暮れどきについ、言いたくなっちゃってヤバイのでした。

<2012.7.31記>
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