このレビューはネタバレを含みます
西田敏行が金田一という異色のキャスティング。角川春樹プロデュース。東映制作。
この監督さんの作品は当時何本か見たことがあるし、画面構成や演出など安定感あり良かった。なんといっても角川映画で育った世代なので!
瀬戸内の鄙びた景色、美しいです。
西田のブサ面は慮外にした、コミカル薄めのシリアス金田一、カッコよく撮ってくれている。
美禰子と金田一の関係に、プラトニックなロマンス漂わせていたり。予想外の趣向上乗せもキライじゃない。
しかし、どなたも書いてらっしゃると思うが、アキコ(漢字が出ない)役の鰐淵晴子の存在感が群を抜いている。
華族の令嬢がそのまま歳とったような婦人。
少女のようなあどけなさと成熟した大人の肉体のアンバランス。
不安定で流されやすい性根を映した瞳の弱々しさ。あんなに美しい形をしているのに…
そんなひとつひとつがアキコの存在感を裏付けていて凄い。
ほか、池波志乃、金田一の下宿のおかみさん役・浜木綿子、須磨の旅館の女将役・中村玉緒など色気のある、着物の着こなしが美しい女優か揃っていて、非常に満足!
そして何故か金田一の捜査をサポートする、闇市かいわいの顔、梅宮辰夫も愛嬌のある存在。
タブー、生々しさ、などは昨年NHKでやった吉岡秀忠版金田一が上だったが、エロスの雰囲気や描写はこちらのが上でござった。
吉岡版を見て、あまりの陰惨な結末に絶句し、腑に落ちなくて本作とあと古谷一行版も見た。
結論としては、陰惨な事実は変わらないけども、アキコ像をどう描くかによって結末の印象が変わると思った。
吉岡版のアキコと利彦はモラルの欠如した救いようのない退廃主義。どこまでも醜悪。いくら憎んでも余りある、唾棄すべき母親像で犯人の心情を裏付けした。
西田版のアキコは白痴美の温室の花。地獄の責め苦に喘ぐ子供達を目の当たりにして、自ら滅びる。
このように悪魔の母親像がどうケジメをつけるのかつけないのか、という辺りも、鑑賞後の満足感に影響してるのではないか。