スギノイチ

懲役十八年 仮出獄のスギノイチのレビュー・感想・評価

懲役十八年 仮出獄(1967年製作の映画)
2.0
加藤泰監督の傑作『懲役十八年』に続くシリーズ2作目だが、内容的には特に関係が無い。
普通、こういうプログラムピクチャーで前作と話が繋がっていないのは珍しくない。
ただ、それでも大体何か共通するテーマがあったりするのだが、これは本当に「安藤昇が出ている」という以外に何も関係が無い。
「子供と遊んであげる安藤昇」という激レアシーンがあるので、それを見たいという奇特な人にはいいかも。

この時期の安藤昇の映画というと、『男の顔は履歴書』に始まり、『日本暗黒史』然り『実録安藤組』然り、「特攻の生き残りである安藤昇がヤクザとなって、捨て損ねた命とエネルギーを暴力の世界で空しく行使する」という内容が多い。
中でも、前作『懲役十八年』はその決定版だったのだが、本作は続編のくせに流れをガン無視して、任侠映画ともケイパー映画ともつかぬ仕上がりになっている。

物語は出所した安藤昇が2人の仲間を誘い、マフィアの金を強奪するという内容だ。
珍しくクールで思慮深い役どころな若山富三郎、弟分は聾唖で気の優しい伊丹十三。
この3人が並んでいると変な迫力がある。ヒロインの松尾嘉代も凄く綺麗に撮られている。
と、キャラや設定は一風変わっていて魅力的なのだが、肝心の話がイマイチ面白くない。

前半の大まかな流れは深作欣二監督の傑作『資金源強奪』に似ているが、テンポも緊張感も全然無い。
特にプールサイドでの駆け引きの緊張感の無さときたらもう…
駆け引きの最中、はるか遠くから伊丹十三がスナイパーライフルで牽制しているのだが、『資金源強奪』に似た様なシーンがあるだけにダサく見える。
「聾唖ゆえに安藤昇の唇の動きを合図に狙撃できる」というアイデアは良いのに、なんであんな和かなBGMを流すのか。
あと、若山富三郎が死ぬ時だけいきなり関西弁になった理由を知りたい。
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