&y

モダン・タイムスの&yのレビュー・感想・評価

モダン・タイムス(1936年製作の映画)
5.0
【(1)2015/1/1:早稲田松竹】

これはホント心洗われました。

少女と旅立つラストシーン、チャーリーが少女に笑顔を促し、不安げな少女が笑顔を取り戻す。この笑顔と、ずっと流れる「smile」とが、磁石みたいにギュってくっついて離れず、甘やかでロマンティックな、強い美しさを生む。最高に感動したし、フィクションの力とでも言うべき、とにかく強烈な「映画を観ている」という感覚があった。

デパートでのスケート、旧い仲間との再会、ガウンをかけてやるくだりの優しさ。物質的豊かさの殿堂みたいなデパートでチャーリーが少女に与えるのは、それとは異なる種類の豊かさなのだよね。

でもこの作品は、非物質の豊かさだけを讃美するような単純なものではないところが素晴らしく。真新しい服に身を包む少女に再会したチャーリーが、見違えるように美しく輝いた少女に一瞬の戸惑いをみせる、現実の遣る瀬無さ。そんな現実をも大きな心で受け入れるチャーリーは、チャーミングで、人としての色気があって、でもすごく孤独を纏ってて、それゆえに強くて優しい。表層的な笑いに留まらぬ、深い、深い豊かさ。

ロマンティシズムと諦観。ユーモアと孤独。相反すると思えるものほど実はすごく近くて、だから完全無欠の幸せなんてものは存在し得ないのかも、なんてちょっと不安にも似た気持ちで考えたりした。
でも、確実な価値なんてものはないんだから、その時どきの「smile」を、自分或いは誰かのために口ずさんでいったらいいんじゃないのかな。それだけで十分に、美しい。
細野晴臣のカバーに耳を傾け歩く、師走の喧騒が嘘のように静まり返った元旦の東京の、その空気の清々しさよ。


毎年恒例元旦の早稲田松竹にて鑑賞。もちろんお正月に観るのも悪くないけど、この作品にある終末感はやはり大晦日の23時台向きだと個人的には思います(って信頼するフォロワーさんに言ったら賛同してくれて嬉しかったです)。


(レビューずっとサボってましたが、短文で細々と再開しようかと思います。でも3日坊主になるかもしれない。お目汚し失礼いたします)
&y

&y