Ginny

ミルクのGinnyのレビュー・感想・評価

ミルク(2008年製作の映画)
4.0

泣いた。
命をかけた、闘いなんだ。

(映画から引用、和訳は字幕、英語はhttps://stephenfollows.com/resource-docs/scripts/Milk-Screenplay.pdf から。)
『政治は芝居と同じ
勝つことより 発言が大事だ
-Politics is theater. It doesn't matter if you win. You make a statement. You say, "I'm here, Pay attention to me."』

このハーヴィーの、スコットへの言葉通り、ハーヴィー自身は発言力が素晴らしいなと思った。

(映画から引用)
『私の脳を貫く銃弾に すべてのクローゼットを破らせよう
どうかムーブメントを続けてほしい
それは個人の利益ではなく 誰かのエゴでも権力でもない
それは"私たち"のためだ
ゲイだけではなく 黒人やアジア人 高齢者や 体が不自由な人 多くの"私たち"
希望がなければ "私たち"はあきらめてしまう
もちろん希望だけでは生きられない
でも 希望がなければ 人生は生きる価値などない
だから 君やー あなたやー あなたたちが 希望を与えなくては
彼らに希望を
-If a bullet should enter my brain, let that bullet destroy every closet door... And that's all.
I ask for the movement to continue.
Because it's not about personal gain, not about ego, not about power.. it's about the "us's" out there.
Not only gays, but the Blacks, the Asians, the disabled, the seniors, the "us's". Without hope, the us's give up----I know you cannot live on hope alone, but without it, life is not worth living.
So you, and you, and you...You gotta give em' hope... you gotta give em' hope.』

↑に痺れた。
私たちのため、というところ。
希望、のところ。
そして、それを 彼らのために自分から発しなくてはならないというところ。

日頃思う日本の匿名SNSでの酷いレッテル貼りや差別、批判。
国際社会の長い衝突の歴史をのぞいて見ると世界平和はあり得ず戦争は終わらないのかもしれないとよぎった。
けれど、希望を失ってはいけない、とメッセージを送ってくれる人、行動してる人がいる。
そんな中で見たこの映画のハーヴィーの言葉は、全てに通じる大事な考えなのではと自分に響いた。

希望を失ってしまう時、普通の人は弱音を素直に吐く。もうだめだ。
そんな時、強くカリスマのある人が励ましてくれる。でもその人は、本当に強いのか、不安がないのか。
多分、不安でいっぱいだと思う。強くもないかもしれない。ただ、周りの人のため、これからの未来のため勇気と力を振り絞って希望を私たちに教えてくれる。
その人の心を受け継いで繋げていきたい。報いたい。

ハーヴィーミルクに対する知識がなく、前情報はゲイの人、くらいの自分。
シス女性ヘテロなので、ミルクたちの心の葛藤も知る由もない。でも、アライな自分。
冒頭、ミルクに起きた衝撃の展開が語られ、そこに至るまで、を遡って見ていく構成。
序盤に大きな事実を持ってきたことで、いつそれが起きるのか、と興味を持って映画の展開を追えるので上手い構成だと思った。

ショーンペンの演技はもう、言わずもがな。当たり前に上手でしたが、後半につれてその完成度が高まり、圧倒されました。
ジェームズフランコの優しい顔立ちがまた良く、そしてディエゴルナの甘いマスクが憎めない。ルーカスグラビールの無邪気さも良いスパイス。
エミールハーシュは、自分の知ってる彼とは別人だったので全然気付けず。

ミルクのカムアウトの主張は2023年現代から見たら批判の対象となるのかなと思ったけれど、初めての同性愛者の市会議員となったその当時から今現在まで、色々変遷があったのだなと思うことにする。

アニタブライアントと、ブリッグスについては自分の主張が通った=勝利を喜ぶのはまぁ、と思ったけどその中身が誰かの権利を奪った事実なのだと思うとグロテスクだなとドン引きした。
今そう思えるだけで、自分がその当時にいたら得体の知れないものを怖がっていたのかもしれない。

ミルクが、その2人のおかげで自分たちが団結できると言ったようなことを述べた時は、本当にこの人は弁論が上手いなと。
他を下げ自分を上げる論法は品がないなと思うのですが、カッとなるとそうなりがちな気がする。そんな中、自分の怒りをコントロールしようとし、周りからどう見られるかを意識して、言葉を駆使して上手く伝えるのは凄い。
カリスマ性のある人だ。

誇り…。
何もできていないと言ったミルクが。
スコットに誇りと言ってもらえて良かったなあ。
Ginny

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