櫻イミト

長崎の鐘の櫻イミトのレビュー・感想・評価

長崎の鐘(1950年製作の映画)
4.0
原爆を題材にした初めての日本映画。長崎で被爆した永井隆医学博士による同名随筆を終戦5年後に映画化。GHQ占領下(~1952)の制作だったため、あからさまな原爆批判を避け伝記映画という形で描かれた。監督は「君の名は」(1953)の大庭秀雄。脚本は新藤兼人と橋田壽賀子。主題歌は藤山一郎の同名曲。

※「長崎の鐘」とは原子爆弾により吹き飛ばされた浦上天主堂の「アンジェラスの鐘」のこと。

長崎医科大学を卒業した永井(若原雅夫)は、日本ではまだ進んでいなかった放射線医学の道に進む。満州事変に軍医として従軍後、浦上天主堂で洗礼を受けカトリックとなり下宿先の娘みどり(月丘夢路)と結婚。ささやかな幸せを築き始めた矢先に第二次世界大戦が勃発する。教会での無料診断に取り組む中、1945年8月9日、長崎市に原子爆弾が投下された。。。

真面目で地道な人生が一瞬で奪われる理不尽。映画の前半は主人公に好意を抱く看護師(津島恵子)の姿なども描かれて青春映画のようになじみやすい。だからこそ戦争の理不尽さに愕然とさせられる。

敬虔な作品であり厳粛と鎮魂を抱いた。鑑賞後に、今まであまり聞いたことのなかった「長崎の鐘」の歌をyoutubeで聴いてみたら、涙が止まらなかった。
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