喜連川風連

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーの喜連川風連のレビュー・感想・評価

4.6
インセプションの20年以上前、日本中がバブルという夢に踊る中、夢をメタ的に表現した快作。

言いたいことをわかりにくく言う校長の無能さを見事に表現したこのセリフで一気に心つかまれた。

「人間誰しも悩み苦しみ過ち、そして、成長し桃太郎は満州に渡ってジンギスカンになるのであります。かの大ギョエテいわく、苦悩を経て、大いなる快楽に至れ、と言うようなワケでして、何はともあれ、全員ケガ一つせず何より無事、これ名馬であります。くれぐれも安全第一で、そこんとこ、よろしく」

その後は時間に関しての問答が続く。
サクラ先生がパトレイバーのしのぶさんのようだ。

「浦島太郎は、竜宮城で夢のような日々を送り、そして、なつかしい故郷へ帰ってみれば、そこではすでに幾百年の歳月が流れていた。しかし、カメを助けたのが太郎一人でなく、村人全員だったら・・・村人全員が、竜宮城へ行ったのだとしたら、どうだったでしょうねェ。」

「なまじ客観的な時間やら空間やら考えるさかい、ややこしいコトになるんちゃいまっか?
帯に短し、待つ身に長し、いいますやろ。時間なんちゅうもんは、人間の意識の産物なんや思たらええのんやがな。世界中に人間が一人もおらなんだら時計やカレンダーに何の意味があるちゅうねん!過去から未来へキチンと行儀よう流れてる時間なんて始めからないのんちゃいまっかいな?お客さん」

この押井節よ!
24時間戦えますか?
バブルのキーワードに対して、24時間、365日という価値観すら、人間がいなくなれば消失するもので、そこに殉じる意味はなんだろうか。
それを問う。

時間とは観測者がいなくなれば消滅するのか?

なぜ人は現実を希求するのか。
そこへの明快な回答はないまま、ただひたすらに元の世界を目指す。
なぜ諸星は元の世界を求めたのか。
それが最後、腑に落ちなかった。

これとは対をなすように、夢を見たまま終わったのが天気の子。

この世の実感はどこにあるのだろう。

ただ、アタルにラムが好きと言わせてしまったら最後、これではマンガの連載が終わってしまう笑

ラブコメはひっつきそうでひっつかないからラブコメなのに、告白はラブコメの死を意味する。
ラブコメを亡き者にしようとすれば、それは高橋留美子も怒るだろう笑

この世はまた夢のまた夢。
胡蝶の夢のイメージはその後、パプリカに引き継がれる。
喜連川風連

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