けーはち

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのけーはちのレビュー・感想・評価

4.0
「ビューティフル・ドリーマー」との副題の通りのオチなのだが、夢=創作世界というメタ言及に加え、そもそも特定の男女がゴールインするまでフワフワしたモラトリアムを描くラブコメというジャンルの筆頭「うる星やつら」の映画なのに、主人公に自ら好きな女を好きでいる自由のため現実に帰還すると言わしめる(ただしキスシーンは未遂で再びラブコメの日常に回収され結末は明示されない)。独自の思想性で原作者が上映中に気分を悪くして中座したと曰く付きの押井守の名作にして怪作。その異様な物語構造を裏打ちするアニメ描写は巧みで、文化祭前日の喧噪、画面は動いて人はワイワイ大勢いるものの、具体的に何をしたいのかは不明瞭、騒ぐために騒いでいる若者の迷走感、目的のなさ、閉塞感がすさまじい。異変を認識する劇中人物もまた異変の中に吞まれ、気づけば異変が世界規模の何かに発展し、それに反比例して益々狭く閉塞した小さい人間関係のサークルを形成していく。夢のように捉え所なき安息、モラトリアムの空気が横溢している。