ゆう

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのゆうのレビュー・感想・評価

5.0
この世界が現実に存在することを証明できるか。否である。

では、世界の存在を疑っている自分自身はどうか。自分自身の存在は疑えない。これは正である。

街を歩いているとき、私の背後にちゃんと世界が存在するか?一歩ゆくごとに世界が崩れ落ちていっていないか?
中二病よろしくこんな妄想を抱いてモンモンとしていた中学時代に出会えた映画であり、いまだに私のオールタイムベスト。
アマプラで配信されたことをきっかけに再視聴(n回目)。

本作は「胡蝶の夢」を下敷きとして、世界がすべて幻想だったら、という哲学的テーマを扱う。

認識論なのか、存在論なのか、とか難しい話はどうでもよくて、エンタメとしてもう最高に面白い。
全編通じて重く、暗く、独特の空気感が漂う。給湯室のシーンなんかホントにしびれる。

諸星あたるは、夢に生きることを放棄し、この世界で生きていくことを選択する。
世界が存在するかどうかはわからない。けれど、我々は生きていかないといけない。
彼の生への執着に、毎回毎回、強く胸を打たれるのである(彼が夢から逃れられたかどうかは疑わしいのだが)

どうせ世界は存在しないんだから、なんて世捨て人になるより、毎日テキトーに楽しく生きていけたらいいじゃん?と開き直っていきたい次第。

誰か知ろう。百尺下の水の心を、水の深さを。
ゆう

ゆう