エイプリル

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

うる星やつらについてはキャラクターとか大まかなストーリーは把握していましたが全然詳しくない部類です。名作ということで観てみたのですが、そういう初心者にも通用するすごい映画でした。

うる星やつらの世界観でこういう話をするということ自体が冒険というかすごいことなんですが、本作はそれを逆手に取っています。つまり、本作しかりサザエさんしかりドラえもんしかりと、こういったコメディアニメは「不変の世界」「時間経過しない」ということが暗黙の了解として認められています。この「変わらない世界とは何か?」ということについて追求したストーリーは今でも十分通用します。
物語のオチはラムの望みを夢邪鬼が叶えることで永遠の夢の世界が出来上がる…つまりビューティフルドリーマーはラムでした、ということになり、ラストのあたるとラムの目覚めはストーリーの終わりを美しく彩っています。
ここで終わったら「昔の作品にしては斬新だね」で終わったと思うのですが、ラストに出てくる夢邪鬼の姿でラストの意味が変わったところ、ここで一気に評価が上がりました。「うる星やつら」という世界自体がそもそも「あたるやラムの活躍をいつまでも見たい」と望む視聴者の願いを夢邪鬼が具現化した夢であり、真のビューティフルドリーマーとは視聴者自身のことだった、というメタ的展開はかなり衝撃的です。
これを原作付きの作品で、しかも劇場版でこれをするというのは相当な勇気というか、本気の夢オチを見せられた、という感じでした。でもうる星やつらのような人気作だからこその衝撃でもありました。

もうひとつ秀逸だと思ったのは、作中では一切「この世界が変わらないのはなぜなのか」とは誰も言わないんですよね。あくまでも「この世界は夢なのではないか?」というところに問いを置いていて、コメディ世界の不変性に対する高尚な問題意識みたいなものが見えないように「夢」というキャッチーなテーマでコーティングされています。

とはいえそう難しいことを考えて見なくても、ファンタジックな映像、当時ならではのスピーディーな声優の演技など見どころが溢れているのでぼーっと見ててもかなり良いです。神谷明さんの演技はシリアスな場面でもコメディな場面でもどっちでも素晴らしくて好きです。
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