りょう

マンダレイのりょうのレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
4.2
 17年ぶりに観ました。「ドッグヴィル」が“受動的な介入”だったとすれば、続編であるこの作品は、“能動的な介入”の顛末を描いた物語です。
 どちらも閉鎖的で旧態依然のコミュニティを舞台にしていますが、マンダレイの社会構造はさらにわかりやすくなっています。奴隷制度が廃止されて70年が経過しても、いまだ黒人が白人に強制労働させられていました。グレースが奴隷の解放と民主主義の教育を施そうとしますが、人間の価値観は、そんな急激な変革に適応できません。彼らもそれを理解していることは、終盤に驚愕の事実として判明します。
 そうした展開はありがちですが、エンドロールの写真には、NYのワールドトレードセンターとジョージ・W・ブッシュ大統領が登場します。2003年に勃発したイラク戦争とアメリカの民主主義がイスラム文化に介入しようとしたことを風刺しているのでしょう。
 人種差別や奴隷制度を肯定するつもりはありませんが、この作品に登場する元奴隷たちの心理は、あくまで理屈としてなら理解できます。まったくの自由よりも、それなりに支配されているほうが安定的な秩序と平穏な生活を維持できるのかもしれません。被支配層の価値感にもよりますが…。
 舞台劇のような疑似的空間の演出は、「ドッグヴィル」ほど効果的ではありません。あまり凌辱されないヒロインという意味では、ラース・フォン・トリアー監督の作風としてソフトなイメージです。
 ただ、グレースを演じたブライス・ダラス・ハワードは、他にM・ナイト・シャマラン監督の「ヴィレッジ」しか観たことがありませんが、この作品の彼女は、個人的に破壊的な魅力を感じます(ショートヘアがめちゃくちゃ可愛い)。
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