むるそー

マンダレイのむるそーのレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
4.9
「ドッグヴィル」の続編。
前作で酷いしっぺ返しを食らったはずのグレースだが、懲りずにまたも村の更生計画を始める。

今作の舞台は辺境の村・マンダレイ。黒人解放から80年経っても未だに奴隷制度が残っていることにショックを受けたグレースはマンダレイの民主化を決意する。彼女がまず行ったのは、支配者の白人家族を奴隷の待遇に落とし、奴隷として使われていた黒人たちをその身分から解放することだった。


この作品は、"自由"や"民主的"という言葉を全面的に信じている現代社会へのアンチテーゼだ。黒人奴隷が解放されて80年が経ち、平等に民主的になったはずのアメリカは、未だ黒人を受け入れる"準備ができていない"。

奴隷制が支配階級のエゴが作り出した絶対悪なのだとしたら、2000年以上も世界に存在し続けたはずがない。社会的に競争力が低い立場にある人々の暮らしを守っていた側面もある。本作は資本主義や民主制を信仰している我々に対するラースフォントリアーの挑発であり、観た人に人間のサガを理解させる啓蒙的傑作だろう。
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