映画好きなねこ

マンダレイの映画好きなねこのネタバレレビュー・内容・結末

マンダレイ(2005年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

黒人差別、奴隷制度を描いた作品。
ドッグヴィルでもその優しさと純粋さ、善き者であろうとする姿勢から酷い目にあったグレースだが今回もまた。
ママの法律によって縛られ、罰される黒人達を見たグレースは“マンダレイ”をより良い場所にする為短期間だが住み着き黒人達に自由を、差別していた白人達に謝罪の意識と意識改革を与えようと躍進する。
食事をとる時間ですら自分達では決められない黒人達。全てが支配され、管理されている。その環境に慣れてしまっている彼らを哀れに思いながらグレースは「共同体」という概念を彼らに教える。協力しあい、共に作物を育てる。そして何かあればその事柄を議論し合い表決する。そういう民主主義のやり方を彼らに植え付けようとする。
そんな中様々な問題が起こり、それに向き合う黒人達とグレース。その選択は果たして正しいものなのか……。

今回もドッグヴィル同様悲惨なエンディング。彼らにとっての幸せって……と考えさせられる。グレースが行った事は“良い事”ではあるがそれが“正しいこと”であるとは限らない。彼らは嫌々従っていたのではなく、望んでこの地にいたのだ。支配されていたのは彼らではなく“ママ”と呼ばれる白人女性の方だったのかもしれない。終盤、マンダレイのカラクリが明かされた時の驚愕、グレースと同じく頭が爆発しそうだった。籠の中で窮屈な思いをしながらも確実に餌を与えられ、籠の外の脅威から守られる生活が彼らにとっての幸福で、籠の外は自由だが、餌も自分で取らなきゃいけない、誰も守ってくれない、何が起こったら己の責任…そんな生活は幸福などではなく、地獄そのものなのだ。
その他にも様々なメッセージがあったのだろうと思うが私はこのグレースとの気持ちのすれ違いがとても衝撃的で悲しく感じた。
ドッグヴィル同様、まっさらな場所に簡易的に壁やドアを置いて間仕切りしているだけのセットだったが、今回はその演出による不愉快さ、薄気味悪さは感じなかった。