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ジュブナイルのtetsuのレビュー・感想・評価

ジュブナイル(2000年製作の映画)
4.1
『STAND BY ME ドラえもん』の予習として鑑賞。


[概要]

山崎貴監督の長編デビュー作となったSFファンタジー映画。当時ネットで話題になったファンによる二次創作『ドラえもんの最終回』を基にした作品で、謎のロボット・テトラと少年たちのひと夏の交流を描く。


[感想]

商業映画監督としては有名ながらも、デビュー作の題材が『ドラえもん』だったことはあまり知られていない山崎監督。

そんな幻の一作ということでDVDを購入し、鑑賞してみると、日本のジュブナイル映画*の中でも最高傑作といえる出来で感動した。

*ここでは、少年少女が活躍するファンタジー映画のことを言う。

90年代の少年少女を象徴する小道具(プレイステーション、ピカチュウ、コロコロコミック)の懐かしさ。

デビュー初期の鈴木杏さんの可愛さに、冴えない科学者がハマっている香取慎吾さんなど、役者陣の魅力。

『スタンド・バイ・ミー』(木造の部屋での話し合い、線路を歩く)や『E.T.』(未確認生命体との冒険)を思わせるシーンの数々。

この時代の日本映画だからこそ描ける内容にも、強く惹きつけられる作品でした。


[山崎貴監督作品として]

このあと、監督が手掛ける作品の過半数が漫画原作になると思うと、なんとも、それらしい作風の本作。
(本作はドラえもんの二次創作を基にしたオリジナル脚本。)

劇中では、のちの監督作品に繋がる要素が多々見られたのも興味深かったです。

吉岡秀隆さんの起用(『三丁目の夕日』)や、敵となるボイド人の描写(『実写ヤマト』『寄生獣』)、『ドラえもん』を再現した人物配置には、同監督が手掛けた『BALLAD』(野原一家が登場しないクレしん実写)に近いものもあるのかも……。

ちなみに、本作の特典映像によると、監督は13才のころ、『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』を観て、特撮マンになることを決めたそうで、映画愛を感じる経歴には好感を持ちました。


[作品への熱量]

DVDを購入すると、膨大な設定資料が収録されており、作り手の熱意が分かりやすく伝わってくるのも本作の魅力。

製作を前に企画頓挫してしまった幻のSF超大作『鵺/NUE』のデモリール(『実写ヤマト』感がある。笑)や、『ジュブナイル』のテスト映像に続編のフェイク予告(これが『リターナー』に繋がる)、漫画風のエフェクトが楽しい特殊字幕機能など、遊び心の溢れる特典からは作品への熱量が伝わってきました。


[おわりに]

90年代ゆえの雑なCG描写は気になりつつも、TVから言語を学ぶ異星人の設定には、のちの実写版『トランスフォーマー』にも通ずる興奮があった本作。

粗削りな部分はありつつも、それを勝るほどの熱量に魅了される山崎監督の隠れた名作でした。
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