OASIS

NAGISA なぎさのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

NAGISA なぎさ(2000年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

12歳の少女なぎさのひと夏の恋を描いた村上もとか原作のコミックを映画化。
監督はロマンポルノの巨匠小沼勝。

1960年代の江ノ島を舞台にした青春映画。
寄せては返す波の様に一瞬で、砂浜に残った思い出の欠片は淡く儚い。
ほんのり塩辛くて、けれど蕩けるように甘いファーストキスの味。

小さな居酒屋を営む母と二人で暮らす小学生のなぎさは、夏休みの間叔母の経営する海の家でアルバイトをする事になる。
レコードプレーヤーを欲しがったり、パーマをかけたり、ダンスパーティーに行ったり。
60年代の女の子が憧れたであろう物や人に同様に興味を寄せるなぎさの多感ぶりが、大人になりたくてもなれないもどかしさとわんぱくさを感じさせる。
なぎさが親友とザ・ピーナッツの「恋のバカンス」の曲にのせて砂浜の人混みを踊り歩くシーンはミュージカルの様な軽快さで、目にも鮮やかだった。

海の家で働き始めたなぎさだったが、緊し上手く接客出来ずにいた。
叔母さんの若干引くくらいの陽気さとノリの良さがなぎさの心を動かす。
叔母さんの見よう見まねで、ギャグを交えながら接客し恥じらいつつも徐々に自信をつけて成長を見せて行く姿は微笑ましい。
そして、東京からやって来た少年との淡い「恋のバカンス」。
泳ぎ方を教えながら、砂浜に流れ着いたガラクタや石ころを拾い集めながら。
溜息の出るような口づけに、淡い恋を夢見る乙女心。
ザ・ピーナッツの曲が切なく苦しくリンクする恋模様に胸が締め付けられる。

親友の食いしん坊の女の子やお金持ちの美少女など、なぎさとは違った個性が光る脇役が夏の思い出に色を添え、爆音のダンスシーンと漣の音の心地良さが対照的で昼と夜とではまた違った顔を覗かせる。
「思い出はそっと胸のポケットにしまっておく」という言葉があるように、なぎさの心の奥だけにしまわれた少年との思い出がじんわりと涙を誘った。
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