コーカサス

パンダコパンダ 雨ふりサーカスのコーカサスのレビュー・感想・評価

3.6
『太陽の王子 ホルスの大冒険』の中心スタッフだった高畑・宮崎・小田部の3人が東映動画を去り、『長くつ下のピッピ』のアニメ化のためAプロへ移籍するも、原作者の承認が得られずやむ無く断念、急遽『ピッピ』に変わる企画として誕生した『パンダコパンダ』の続編だ。

前作同様、監督は高畑勲、作画監督は大塚康生と小田部羊一、原案・脚本・画面設定は宮崎駿、原画は近藤喜文といったそうそうたるメンバーで制作された。

アニメーションの作画におけるレイアウトとは、まさに画面そのものを構築する作業であり、その占める役割は想像以上に重大である。(「Aプロダクション10年の栄光」協力/早稲田アニメーション同好会より)

そう、確かにその通り。
特に本作に於ける最大の見せ場である、水没した街を舟の変わりにベッドを浮かべて航走するシーンの水中から眺める景色はアニメ史に残る名場面と云えよう。

“スポ根ブーム”の到来と同時に高畑・宮崎・小田部の3人はAプロを去り、自分たちが本当に描きたかった“子供たちのアニメーション”を作るべくズイヨー映像へ移籍、やがて『アルプスの少女ハイジ』と『母をたずねて三千里』を世に送り出すことになるのだが、そこで宮崎の画面設定はさらに緻密さを増し、本作で培ったレイアウターとしての実力を存分に見せ付けるのである。

ともあれ、彼らが“本気で”目指したアニメーションは、今もところ狭しと…いや、“画面”狭しと元気一杯に駆け回り、我々を飽きさせない。

40 2021