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パンダコパンダ 雨ふりサーカスのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
パンダブームに合わせて東宝チャンピオンまつり向けに製作&公開された子ども向けアニメ『パンダコパンダ』の第二作。
前作同様、監督・演出に高畑勲、脚本・美術設定・画面構成は宮崎駿、作画監督には大塚康生と小田部羊一という、今考えると豪華極まりないメンバーが揃い踏みしています。

お話的には前作同様、初期宮崎駿作品と通底する展開を辿ります。
特に、「町が水の底に沈む」という展開は、『カリオストロの城』『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』(腐海に沈む&王蟲の津波に呑まれる)等で繰り返し描かれたモチーフ。ただし、普通に受け止めると災害でしかないモチーフが、破壊的な面を殆ど見せず、非常に微笑ましいものとして描かれているのは要注目。
「悪しき文明社会を水没させる=水に流して再出発しよう」という、ユートピアのための文明崩壊展開は、本作の10年前に『妖星ゴラス』等の特撮映画でも描かれていましたが、子ども向けアニメでバンバン描写するのが、宮崎節の恐ろしさですね。

また、ミミちゃんとパパンダ&パンちゃんの3人生活において、前作からの状況変化が全くないという点にも着目したいですね。
前作でミミちゃんが一人暮らしすることになったのは、おばあちゃんが長崎に法事に行ってしまったため。それなら、別に長いことかからず帰ってきそうなものですが、ミミちゃんの家にはおばあちゃんの姿はなく、まだ帰ってきておりません。ましてや、遂におばあちゃんの姿が描かれることすら、なくなってしまいます。
おばあちゃんは法事と言って出かけたましたが、実際はどこかの施設に入居してしまったと見るのが妥当なのかもしれませんね……。

パンダコパンダシリーズは、ハイクオリティのアニメーションで、秘密基地のような世界を駆け回り、子どもの憧れを具現化したような画を見せてくれる、夢物語の玉手箱でした。
30分台の作品ながら、これほどよく出来た作品にまとまっているのは、ひとえに制作陣のレベルが高かったにほかならないからです。
しかし、一皮剥いて現れるのは、おじさんたちの癖の表出。これを臆面もなくやってのけるところに、才能溢れるクリエイターの狂気が垣間見えますね。
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