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ブリットのtjZeroのレビュー・感想・評価

ブリット(1968年製作の映画)
4.7
目立たないけど実は衰退の危機を迎えているのが、”刑事アクション”というジャンル。
6~70年代は名作・傑作が目白押しでしたが、CGやVFXを駆使した大型アクションが主流になってくると、一匹狼の地道な捜査を描くこのジャンルは本数が減ってきます。
8~90年代の『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』といったシリーズ以降は、先細ってきた感があります。
その証拠に、現在のスターで”刑事役”が似合うのは何人いるでしょう?
ジェイソン・ステイサムはアクションは抜群ですが犯人役の方が向いているし、ブラッド・ピットは『セブン』で刑事に扮していますがそれっきりで特に似合う訳でもない。
人気の『ワイルド・スピード』シリーズもヒトよりも車がメインだし、何より刑事役のポール・ウォ―カーは今は亡い(涙)。
皮肉なことに、”かつての大スター”は刑事役が似合っているのです。つまり、『エクスペンダブルズ』シリーズに出ているような連中。
シルヴェスター・スタローン(『ナイトホークス』、『コブラ』)、アーノルド・シュワルツェネッガー(『レッドブル』)、ハリソン・フォード(『刑事ジョン・ブック 目撃者』)、メル・ギブソン(『リーサル・ウェポン』)といった面々。
すなわち、現在では刑事役が似合うような俳優が”エクスペンダブル”(消耗品)になってしまっているのです(再び涙)。

あ~、好きなジャンルの衰退を惜しむばかりに、前フリが長くなってしまいました。
肝心の本作(’68年)はそんな失われそうな刑事アクションを代表する傑作です。
極端に切り詰めた少な目なセリフながら、複雑な事件の展開がスッキリとわかっちゃう。
俳優の表情、身のこなし、銃撃戦、カーチェイスといったまさにアクションに語らせて、キビキビと物語が躍動していく。
主演のスティーヴ・マックイーンのシャープな頬のライン、クールな表情、そして何より、すぐれたレーサーでもあった彼のスタント無しの大迫力のカーチェイスのスゴさに震える。
サン・フランシスコの長い坂を駆け下りる、興奮必至の名場面をぜひご覧あれ。『フレンチ・コネクション』と並ぶ、カーチェイスの最高峰だと思います。
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