TakaCine

インディアン・ランナーのTakaCineのレビュー・感想・評価

インディアン・ランナー(1991年製作の映画)
4.3
【全て壊したい衝動】
公開当時に観に行って、凄く衝撃を受けました。よく分からないところもあったんですが…ただ、凄く繊細で傷付いた部分の話だなあと記憶に残りました。

ショーン・ペンの初監督作品。

昔から好きな俳優さんで、凶暴さと相反する傷付いた繊細さが昔から好きで、本作はとても彼らしい作品だと思いました。

久しぶりに観たけど、今でも全部の意味は分かりませんね😅難しい

泣き出したい悲しみと窮屈な人生と幸せでありたい願望が、混ざり合って心に重く沈殿します。観終わった後の深い沈黙。好き嫌いは分かれそう。

〈内なる苛立ち〉
僕は全て壊してやりたい!と思う時があります。いわゆる破壊衝動。疲れた時、苦しい時、無価値と感じた時、絶望した時…全てを壊したくなります。

自分の生活も人間関係も命さえも…常に社会ルールを遵守し、人には優しく、後ろ指を指されないように生きる…たまに生き苦しくなって、逃げ出したくなるのです😢

本作は、曲「Highway Patrolman」(Bruce Springsteen)を基にしています。

実直な警官の兄ジョー(デヴィッド・モース)と問題ばかり引き起こす弟フランキー(ヴィゴ・モーテンセン)の物語。

初見の時は、フランク/フランキーの気持ちに共感しました。当時、僕自身が凄く生き辛さを感じていて、上手くいかないことへの内なる苛立ちや怒りを溜めて、(自分と運命に)ムカつきながら過ごしていたからです。

〈アウトローな弟〉
ベトナム帰還兵である弟。元々素行が悪かったが、戦争から戻ってからは闇がより拡がったような凶暴さ。穏やかな時の愛嬌のある表情と、苛立った時の鋭く射るような目付き。若いモーテンセンが、そのギャップを印象的に演じます(ワルぶりが格好良い!)。

内なる苛立ちを制御できず、暴走しては嫌悪感に潰される。はっきり言って傷付いた子供です。ショーン・ペンが、かつて演じていたような役柄です。

優等生の兄貴と比較され、いつも負け犬だった…ただ愛されたいだけなのに、愛情が思うように貰えなかった。傷付いて暴れるから、いつまで経ってもつまはじき😢

まるで『エデンの東』の次男(ジェームズ・ディーン)ですね!劣等感の強かった自分は、不器用すぎるフランクに凄く共感していました。

〈温厚で優しい兄〉
今回は兄の気持ちにも共感出来ました。実直なので弟の素行に頭を悩ませながら、どうにか真っ当に更正しようとするジョー。

兄は兄で窮屈な想いをしながら、家族を守るために、内なる苛立ちや葛藤を静めて生きていました。

演じるモースが秀逸でした!優しすぎる眼差し(その奥の凄く悲しげな眼差し)、温厚な態度(人の良すぎる態度)、熊のような大きな体躯は、秘めた荒々しさを示しています。両親や自らの家族を守るために、角を折った牡牛のようでした。実は無理をしているのです。

兄のように誤魔化して生きられない弟、弟のように思うままに生きられない兄。お互いが必要なのに、相容れない煙たい存在でもあります。

兄は常に西部劇のヒーロー(模範)で、弟は常に成敗されるインディアン(落ちこぼれ)の星回り。

優しくされると拒絶したくなる弟、弟が問題を起こすと心が苦しくなる兄。それでも何があろうが切れることがない、兄弟の絆(血)を強く感じましたね。

お前が傷付けば、俺も傷付く
血を流してみせるジョーの覚悟

この場面が好きだ‼️

だけど、その愛情が弟にどう届いていたのか…

不器用すぎて傷つけてしまう生き方を、ストレートに描いてくれた作品。

チャールズ・ブロンソン
デニス・ホッパー
パトリシア・アークエット
ベニチオ・デル・トロ(チョイ役、笑いました!理由は…)

今思えば、キャストが豪華でしたね😊♪

僕の中でも、ジョーの部分とフランクの部分が相克している時があります。ちょっと忘れられない作品です。
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