荻昌弘の映画評論

西部の裁きの荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

西部の裁き(1948年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 日本に始めて来た、シネカラアの着色映画。テクニカラアに比べ、色は単純でどきつく、且つ不安定だが、この程度の西部劇ならこれで充分、却ってナマナマしさが強調されていいくらいである。
 話は、「報復はわれにあり、われこれを報いん」という、まるで「アンナ・カレーニナ」の申し子みたいなテエマを掲げてはいるが、実のところきわめて単純な仇討綺譚で、例の如き、酒場とホテル以外は何もないような町の中や、広い野原で、恒例の激闘が行われる。
 レイ・エンラント監督としては、描写も案外にひきしまり、殊に主人公のランドルフ・スカットが手の指を踏みつぶされながら悪漢を叩きのめす格闘あたりは、ちょっとした物である。最近ガラクタ物の小粒ばかりみせられる西部劇の中では、とびぬけてまともな一篇、活劇ファンは是非とも御一見を乞う。
『新映画 7(12)』