浜一

醜聞(スキャンダル)の浜一のレビュー・感想・評価

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)
3.7
三船敏郎の画家と山口淑子の声楽家が偶然に出会ったところを週刊誌記者に写真を撮られスキャンダルとなる。裁判を興して出版社を訴える2人。ところが物語は何故かその2人に雇われたボンクラ弁護士、蛭田乙吉(志村喬)に大きくシフトしていく事となる。黒澤明監督は脚本を書き進めるうちに、自然とこの蛭田乙吉が浮かび上がってきたのだそうだ。実は監督が居酒屋に出かけた時に出会った人物が元になっているが、執筆中は全く思い出す事なく無意識にこの人物が膨らんでゆくのを楽しんでいたという。
本来はタイトルにある通り醜聞に立ち向かう主人公たちの物語になるはずで、ボンクラ弁護士が病の床に伏せる愛娘の為に、明日は良くなろう、明後日は良くなろうとする話ではなかったはず。脚本執筆の段階で脚本家の筆が滑った失敗作だと思うのだけど、何故かボンクラ弁護士蛭田乙吉氏を嫌いになれない。不思議な魅力のある作品になっている。黒澤さんの潜在意識に残っていたモデルの人物がそれだけ魅力的な人間だったのかな。
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