けんたろう

醜聞(スキャンダル)のけんたろうのレビュー・感想・評価

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)
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いや、そっちのスキャンダルだったのかよ。


三船だのオウトバイだのは、最早や何うでもよい。
彼の背、彼の声、彼の表情。のちの『生きる』に繋がる、志村さんの名演が堪らないのである。
貧弱なる精神が為めに、悪に屈して罪を重ねてしまふ愚かな性。其の罪悪感の為めに、清純なる善或いは優しさから受くる苦痛。誰れにも云へぬ其の状と情とが、痛いほど伝はつてくるのである。

嗚呼、何んと苦しき映画であらう。
たゞ、其れが故に、「蛍の光」の大合唱には涙が止まらない。希望を以つて光り輝く其の無様な男の美しさよ!

とはいへ、いやに台詞臭いのと、三船敏郎が若すぎて全く格好良くないのと、其の三船に台詞で最後を語らせてしまふのとで、余んまり佳い作品とは云へない。此れでは、志村さんの肉を切らせて骨を断つ、告白、或いは懺悔のシインも霞んでしまふ。
何んだか、ひどく残念な一作であつた。