津軽系こけし

お早ようの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
4.6
無駄にこそ、妙味あり


【どこへゆく日本】

小津安二郎監督50作目。

折りしも「東京物語」でいかめしい賞を諸々授かった彼が、直後に撮影した作品です。郊外の新興住宅街を舞台として、その近所付き合い模様を描くコメディタッチの作風です。

コメディとしては軽快なテンポで進んでゆくのですが、この住宅街での人間模様が戦後日本の社会構造の縮図になっており、当時を生きる人々へ向けた鋭くも温かなメッセージが込められていました。
50年代に留まらず、2021年の世俗観でもハッとさせられるような台詞がいくつもありました。

【無駄の真価とは何か】

利便性にあやかって我々は本当に極端になってしまいました。

電子が基盤となった人間付き合いの中では、多くの場合養うべき自己を蔑ろにして意識のみが先行しています。ぶっちゃけてしまうと、今世の現代人はあの子供たちが成長せずに辿り着いた境地だと考えます。

公園での制限だとか、自粛で生じた諸々のルールだとか、どんどん無駄がなくなって成長するべき機会が今は奪われている。悪化の一途でしかないと思います。
今はそれなりに別の妙味がある時世ではありますが、無駄こそが人生には必要というところは、今も昔も変わらぬ事柄だと思うのです。

そしてサラリーマンなんかは、今と全く変わってませんね。お酒飲んでるシーンなんか愛くるしくなりました。

【おなら的まとめ】

あのおならのアイデアはサイレント映画期から脳裏で燻らせていたそうな。本当に作家って変なのって感じですわ。

素敵な映画をありがとう
津軽系こけし

津軽系こけし