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お早ようの&yのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
5.0
【2013/12/9:神保町シアター】子どもたちがはじめる喋らない「ストライキ(という方法に、時代背景を鑑みて深読みしたくなる)」が作中最大の出来事だが、都会で暮らす私たちの多くは隣人への「お早よう」どころか名前すら知らないし、スーパーの「レジ袋要りません」さえも言葉に出す必要がないようカードが用意されてる。「無駄なお喋り」を「暮らしの余白」と言い換えるならば、余白の排除は効率的かもしれないけどちょっと窮屈さも感じるかもね、と。50年以上も昔の作品なのに、現在と地続きの普遍的なお話。
子どもを天使みたいに描かず、本質を見抜く存在として捉えてるところが好き。「子どもだからわからない」ことなんて本当はひとつもない、抵抗も諦観も知らんぷりも糾弾も、子どもは全部わかってる。だから「大人だって無駄なことばかり喋るじゃないか」なんて言ったりもする。余談だけどエンタメの多くは子どもをピュアに描きすぎ、と常々思っている。子どもをなめんな、といつも思う。
今はすでに失われた長屋暮らしへの郷愁に駆られつつも「昔はよかったね」だけにはならないリアリティがあるのは、あたたかい日々をただ笑顔で礼讃するのではなく、シビアな面はちゃんとシビアに(出てく若夫婦、定年、高齢化など)描いてるからかな。
歳をとってから好きになった小津作品のひとつです。ラストシーン秀逸。
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