wisteria

飛行士の妻のwisteriaのレビュー・感想・評価

飛行士の妻(1980年製作の映画)
4.2
先日の『海辺のポーリーヌ』に続き、同じエリック・ロメール監督「喜劇と格言劇」シリーズ第一作目のこれをやはりAmazon primeで。

話は5歳年上の恋多き女性アンヌに振り回される20歳の苦学生フランソワの一日を描いたもの。彼が主役のためか『海辺のポーリーヌ』に比べ関係性が全般にやや重くじっとりしていてそこは私の好みではなかったのだが、アンヌの不倫相手の飛行士クリスチャンを尾行する途中で同行することになる15歳の少女リュシーとの探偵ごっこや二人のやりとりにかなりの尺がさかれていて、そこはとても楽しい。この不思議ちゃんのリュシーがちょっと信じられないほどの美少女で、後の役者としてのキャリアはそれほど多くはないようだが同じロメールの『友だちの恋人』にも出ているらしいのでまた機会があれば見てみたい。今回のAmazon primeのロメール祭のラインナップにも入ってるようだし。

本作では田舎の避暑地ではなくパリが舞台で、同時録音、即興演出、手書きの葉書、素人探偵と来るといかにもヌーヴェルヴァーグな感じだが、そういえばロメールも一応その一員に数えられてはいるのだった。ただロメールの代表作の趣向とはやや異なるようで、本作撮影は盟友ネストール・アルメンドロスではなく、ベルナール・リュティック。彼とも『美しい結婚』『友だちの恋人』を撮っている。ちなみにベルナール・リュティックはその後英国人監督ヒュー・ハドソンの撮影監督をつとめたりするが、ベネズエラでの飛行機事故で2000年に亡くなられたとのこと。

『海辺のポーリーヌ』でも思ったが本作でもクロージングの一連のシークエンス(特にリュシー再登場からのラスト、件の葉書を出して雑踏に消えゆくフランソワと背後に流れる楽曲の使い方)が洒落ていて、品のある後味の良さはさすがは匠の技だなと感銘。

原題は"La femme de l'aviateur"で、英題は"The aviator's wife"。このタイトルは作品のオチにも関係している仕掛けあり。会話劇の本作を十全に楽しむのにフランス語が出来たらなあと何度思ったことか。。
wisteria

wisteria