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飛行士の妻のhasseのレビュー・感想・評価

飛行士の妻(1980年製作の映画)
4.3
○「人は常になにかを考えてしまう」(オープニング)
○「いつだって女に決定権があるの」(リュシー)

ロメール「喜劇と格言劇」連作の第一弾。

苦学生フランソワが恋敵のパイロットと彼に同行する女性を尾行する。フランソワの窃視的眼差しの途上には、バスで同席した15歳の学生リュシーがいる。公園で、彼女の純朴な視線はフランソワの視線の矛先をねじ曲げ反射させる。

フランソワ→パイロットへのじめじめした嫉妬の物語は、リュシーとの出会いによってコミカルで明るい会話劇へと変質していく。主人公だったはずのフランソワを映すショットが減っていき、だんだんとリュシーがショットの中心へと躍り出る。物語とショットの主軸を独占する女。なんて映画的で魅力的な存在なんだ!

その前後のOLアンヌ(フランソワの恋人)
が同僚と恋バナしたり、フランソワにくだを巻いたりするシーンはわざとかというくらい既視感バリバリの典型的な恋愛劇にありそうなシーンをやっている。

ラスト、フランソワがリュシーに言われた通り、尾行の顛末をしたためた手紙をリュシー宅へ直接投函しようとすると、家の前でリュシーが若い恋人とイチャイチャしていて、フランソワは手紙に切手を貼ってポストインする。とにかく恋愛関係が多すぎて複雑なあまりこんな手紙すら直接渡せないパリっ子たち…。

リュシー役の俳優はコケティッシュで可愛くて演技も巧いが、他の出演作が無さそうなのが無念。

アンヌとフランソワの会話シーンで、アンヌが苦しそうに、だるそうにベッドの上で項垂れたりクッションにもたれたりする演技好き。
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