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ジョゼと虎と魚たちのNMのネタバレレビュー・内容・結末

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

私たちはすぐ「福祉を利用すればいい」と言うが、そこからこぼれ落ちる人というのはたくさんいる。
なるべく福祉のお世話にならず、人生を楽しんだりせずに生きなければと考える人も。
恋愛物語だが夢物語ではない現実社会に即した印象でとても好感が持てる。

歩行が不自由なジョゼ。
おばあと隠れるように二人暮らし。
収入源が見当たらないので生活保護ぐらいは受けていそうだが、おばあは他の福祉サービスを殆ど知らず信じてもいないし利用する気もない様子。
ジョゼを大事にしているが、彼女を壊れ物と呼び、世間の役に立たない人間だから遊んだり人生を楽しんではいけないと考えているらしい。
だから世間から隠し、福祉サービスもなるべく利用しないのだろう。
ジョゼは学校にも行っていないし友人もいないのでおばあの言う通りに生きてきた。

就活を控えた学生のツネオはジョゼたちと知り合いになり家に上がりこむようになる。
しかしある日、ツネオには福祉を学ぶ何不自由のない美人の彼女・カナエがいるところを見かけたジョゼは取り乱し、彼を追い出す。おばあももう来ないでくれと戸を開けてくれない。

しばらくしておばあが亡くなったことを知り、再び訪ねてみる。
ジョゼは本当はもうずっと前からツネオを心から頼っており、今は完全に一人きりでもうほかに頼る人がいない。
ついに「ここにずっとおって」と本音を吐露する。今まで上から目線の態度だったジョゼが初めて本音を語り、ついに二人の愛情が成就。
ツンツンだったジョゼはツンデレに。
ツネオはジョゼを放っておけないとカナエを振った。

ジョゼと付き合うということは色々と覚悟が問われる。今の生活をもう少し何とかしてやらないといけないし、どういう付き合い方をするのか少しは考えないといけない。
今までの女性と違い、気まぐれで付き合って良い人ではないと感じた。

ツネオが実家に帰る日、ジョゼも連れて行くことに。
ただジョゼは自分が結婚などできるわけがないと覚悟していた。
当日、ジョゼは旅行自体初めてではしゃいでいる。
しかしツネオは途中で怖気づき、急用で行けなくなったと弟に電話を入れる。怖気づいたのか、と図星をつかれた。

何かを察したジョゼは、海が見たくなったと気を遣い、結局そのまま初めてラブホテルに一泊。
ツネオはジョゼに車いすを買おうと言うが、ジョゼはあんたがおぶってくれればいいと断る。俺だっていつか歳を取るんだしと言うと、しゅんとして黙った。
車椅子に乗り生活が自立していくことでツネオとの距離が離れることを心配している様子。

ジョゼが心情を語る。
うちは昔海底におった、あんたに会うためにやってきた、あんたがおらんようになったらまた海底に一人で戻るんや。まあそれもまた良しや、と。

数ヶ月一緒に暮らしたあと別れることに。ジョゼはあっさりツネオを見送った。
ツネオは前の彼女カナエと落ち合うが、途中泣き崩れる。
責任の重さから開放された安堵だろうか。それとも自分がジョゼから逃げたことと、自分の弱さを改めて実感したのだろうか。

ジョゼは電動車いすを乗りこなし、また一人で淡々と暮らした。

他人から見るとツネオは残酷なことをしたようにも見えるが、ジョゼにとってはそうではないのだろう。
一人で生きていくんだと言い聞かせながらもツネオに心が揺れ動いてしまう様子がとても悲しく切なかった。
ジョゼの息子の語彙が少なすぎて面白かった。
短編集の一話らしいので、他の話も読んでみたい。
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