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サンタ・サングレ/聖なる血の盆栽のレビュー・感想・評価

4.3
あまりにも残酷な"愛"の呪縛


 約2年振りにアレハンドロ・ホドロフスキー監督作品を鑑賞。最後に観たのが『ホーリー・マウンテン』とかいう最高に狂った宗教勧誘映画だったので、ホラー映画という枠組みとされている本作を観ること躊躇っていました。ですが、いざ蓋を開けてみるとまさかのマトモな映画だったことに驚き。初めてホドロフスキー作品でちゃんとした映画を観ることができました。

 というもの、過去2作『エル・トポ』と『ホーリー・マウンテン』がありえないほど狂気じみた作品であったことが脳内辞書に記載されています。それに比べると本作は、ストーリー構成や登場人物の感受性などが一般的に伝わりやすい作りに。ですが前提として、アレハンドロ・ホドロフスキーが監督なので普通の映画ではないことは当然のこと。彼の映画の中では難易度が低めだということです。

 やはりホドロフスキー作品はビジュアルの衝撃が凄い。本編が始まり、オープニングの1シーンを観た瞬間に伝わる「アレハンドロ・ホドロフスキー感」。他の映画では感じられない圧倒的違和感が画面から漂ってきます。そしてその違和感が次第に狂気へと変貌していき、本来なら神と性で物語が終わるであろう所で本作は、終着点に「愛」が組み込まれている。思わずラストは心の底から感動してしまいました。

 相変わらず変態なホドロフスキーと、奇跡的に生まれた誠実なホドロフスキーの2人が共同で製作したかのような本作。捉え方によっては本作も宗教勧誘映画ではありますが、それ以上に己との戦い、トラウマ克服術を優しく教えてくれる教育映画でもありました。これだからホドロフスキーの映画は嫌いになれない。

 『透明人間』の1シーンを再現するフェニックスが最高だった。あと音楽がめちゃめちゃ良い!!

2024.5.2 初鑑賞
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