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若い川の流れのakrutmのレビュー・感想・評価

若い川の流れ(1959年製作の映画)
3.5
会社の同僚どうしの男女を中心に若者の恋愛模様を描いた、石坂洋次郎の同名小説を原作とする、田坂具隆監督の恋愛映画。石坂洋次郎の同名小説が原作であるが、同じく石坂洋次郎原作の裕次郎映画である『陽のあたる坂道』や『あいつと私』などと比べると、あまりメリハリのない内容で、2時間の長さはちょっと中だるみしてしまう。『週刊明星』に連載されていたという小説では、若い女性読者向けに当時の社会人の若者の恋愛事情をユーモラスに書いていたのだろうが、映画ではその感じがあまり出ていないのが残念である。

田坂具隆監督はいわゆる太陽族映画などのアウトロー的キャラとは異なる役柄を演じさせて、裕次郎の新しい側面を引き出してきた監督であり、本作もその流れに位置づけられる。本作で裕次郎が演じる若い男性社員も恋愛ごとに疎く女心を理解できないという草食キャラであり、すでに慣れているのか裕次郎もそつなくこなしている。しかしこの頃の裕次郎は同じような映画を機械的に生産して同じようなキャラを自分に演じさせる当時の日活にうんざりしていて、本作公開の2ヶ月後には失踪騒ぎを起こしている。どことなくそんな感じが演技の中に出ているのかもしれない。

石原裕次郎の相手となるのは当時の日活の黄金コンビであった北原三枝で、裕次郎演じる主人公を密かに想っている同僚女性を演じている。しかし本作での北原三枝はあまり輝いていない(と個人的には感じた)。実はこの女性はちょっとした過去があるのだが、その過去が実感できるような魅力もあまり感じられなかった。北原三枝というよりはどこか石原まき子が演じているように見えるのである。このときには二人はすでにプライベートで恋愛関係にあったわけだが、石原裕次郎を一歩後ろから支える北原三枝という関係性が無意識に出てしまっているのかもしれない。

もうひとりの登場人物として、主人公の男性社員を婿候補として紹介された会社の専務の娘がいる。彼女を演じているのが芦川いづみであり、北原三枝の恋敵というキャラでは彼女を起用しないだろうから、最初はただの脇役かと思って見ていたが、実はかなりの重要人物であった。芦川いづみの典型的な役柄である清楚系や幸薄系とは異なる、世間知らずでちょっと自己チューな、でも気の良い女性をかわいらしく演じているのはグッド。洋装・和装のどちらも披露するとともに、誕生パーティーにはダンスを楽しんだり、男性とキスをしたり、主人公の二人のキューピット役をしたりと、いろいろないづみちゃんが見れるのもファンには嬉しい。
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